表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/38

第10話 ダンジョンスレイヤー

『それで君の名前は?』


佐甚サジンだ)


『サジン……へぇ、強そうな良い響きね』


 こっちの世界ではそういうイメージなのか。

 前の世界じゃ名字か名前か判りづらいってよく言われたものだが。


 とりあえず、アムに訊きたいことが山ほどあるので質問をしてみることにした。

 俺はこの異世界のことや、自分の置かれている状況に対しまったくと言っていいほど無知なのだから。


(そもそも何でアムは俺のことが見えてるんだ?)


 今の俺には肉体が無い。

 この無機物であるダンジョンそのものが俺であり、個体として認識できていることが不思議だ。


『あぁ、そのことね。それは私の眼がちょっと特別で魂を知覚できるからだよ。私の眼には君が揺らめく青い炎の様に視えてる』


 アムの話を聞いた俺は変異種との戦いを思い出した。

 あの時の憶測だった〝魂の座標〟という認識は間違っていなかったようだ。

 俺はこのダンジョン内に魂を宿しており、その位置を視界スキルによって移動することができるというカラクリなわけか。


『魂の色ってそれぞれ皆違うんだよね。ちなみにサジンの色は私の好み♪ 胸がすく様な天色あまいろの炎』


(じゃあ次の質問)


『華麗にスルー!?』


(自分に視えない魂の色とか褒められたところでピンとこないんだよ)


『にひっ、サジンもそのうち視えるようになるよ。なんてったって運命共同体だからね』


 やたらと運営共同体を推してくるな。まぁ実際そうなんだろうけど。


(それで、アムは何者なんだ?)


『……』


(なぜ黙る)


『それって答えないとダメ?』


 アムは甘えたような上目遣いで問いをはぐらかそうとした。

 俺に知られると何か不都合なことがあるようだが、詰問したところで良い方向にはいかないだろう。出会ったばかりで互いの信頼関係も無い間柄だ。


(はぁ……いや、話しても良いと思ったタイミングでいいや)


 他人に何かを求める時はそれなりの筋と覚悟を通す必要がある。

 自分がまっとうできないことで他人を咎めるべきじゃないと爺ちゃんがよく言っていた。

 それが一番周囲からの信頼を失い、己の価値を下げるからだと。


『あーん! サジン優しい☆ そういうとこ好きだゾ!』


 単純に俺が女に甘いだけかもしれん。

 俺は幼馴染の少女・花火ハナビのことを思い出していた。元気でやってっかなアイツ。


 まぁそれはいいとして――。


(あのラットン変異種とかいう魔物みたいなのって、また現れたりするのか?)


『多分ね。あれはダンジョンを殺すための尖兵みたいな存在だから。正確に言えば魔物じゃなくて、さしずめ〝ダンジョン殺し(スレイヤー)〟ってところかな』


(何でそんなことをする必要があるんだ? ダンジョンつったらモンスターの住処みたいなモノだろ)


『その話をするとちょっと長くなるんだよねぇ。それでもいいなら』


 ここは割と核心だな。

 また攻めてくる可能性があるなら今後の対策も必要だし、アムの話は聞いておいた方が良いだろう。


(それじゃあ頼む)


 それからアムは滔々とこの異世界のダンジョンについて語り始めた。


『ダンジョンって存在そのものが巨大な魔力の貯蔵庫なんだよね。ただ()()に在るだけで人々や魔物を魅了する特異点なわけ。冒険者とかもダンジョンって聞いたら危険だと知りつつ探検しようとするじゃん? 魔物は名前の通り魔力のひずみから生まれる生物だから、より高い魔力の純度と量を欲してダンジョンに住み着くの』


(じゃあダンジョン殺しってのは人間とも魔物とも違う存在ってことか)


『ベースは魔物だと思うけどね。んで、それを使役してるのが厄介な異端聖問教会(カテドラル)っていうカルト教団らしいよ。災厄の元凶はダンジョンなのだー! って布教してるヤバい連中』


(つまり危険地帯を潰して世界を平和にしようってことだよな? 話だけ聞いてると、あながち間違ってないような気もするが……)


『サジンは分かってないなぁ。そこにダンジョンがある。だから潜るというチャレンジ精神の理論。つまりダンジョンは愛と希望とロマンの産物なのだぞ☆』


 どう考えてもヤバいのはコイツだと思うのは気のせいだろうか。

 しかし俺も男児故か、云わんとしていることは少し理解できてしまう悲しい性。


(えーっと、まぁ大体わかった。どっちにしても転生したばかりなのに、むざむざ(スレイ)されるのは御免だ――)


『お?』


(俺はこのダンジョンを強く、大きく、育てる。はっきりとした目的ができて良かった)


 爺ちゃんのようになりたい。

 俺は俺が誇れるモノを創り上げて、この異世界で新しい人生を全うしてやる。

白は200色あんねん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ