プロローグ
俺が憶えているのは、けたたましい重機の駆動音や工事現場で働く人々の喧騒。
それを羨望の眼差しで眺めていた。
大工だった祖父の影響で、何かを作るということが好きだった。その光景を見ていることも。
そんな俺が上空から降ってきた建材の鉄骨に押し潰されて死んだらしい。
現実でもフィクションでも、割とよくある事故死のひとつだろう。
まさか自分がそんな目に遭うとは思わなかったけれど。
そんな俺こと享年16歳の阿妻佐甚は、気がつくと見知らぬ部屋で目を覚ました。いや目はないので、意識を覚ましたという方が正しいか。
(……ここは?)
大きさにして十畳かそれより少し大きいぐらいの円形の部屋で、周囲はレンガの様な石材で出来た壁がある。
電球やロウソク等の灯りはなく薄暗いのだが、その壁が淡く発光しているようで完全な暗闇にはなっていない。
床も壁と同じく石造りで、隙間からたくましく雑草が生えていたりする。
そこはまるで地下にある牢獄のような殺風景だった。
そして何より驚いたのは、俺自身がどこにも居ないこと――。
手足の感覚も無く、心臓の鼓動も聴こえず、神様視点とでも呼ぶように部屋を俯瞰して眺めている奇妙な視界。
(えぇ……どういうこと? 誰か説明してくれよ)
当然のこと喋る口、声帯もないので心の中で呟くことしかできない。
そんな理解不能な状況でテンパっていた俺の視界に何かが浮かび上がってきた。
それは見たまんまゲーム等で使われるステータスウィンドウ。いわゆるユーザーインターフェイス的なものだった。
【名前】アヅマ・サジン
【称号】名も無きダンジョン
【レベル】1
【種族】ダンジョン
【職業】ダンジョン
【ステータス】
HP:7500
MP:2000
ST:∞
POWER:0
SPEED:0
LUCK:50
【スキル】
・視界B+
・増築C
・改築C
・生産C
・吸排D+
【魔法】
・未習得
(……あー、うん、そっかぁ。うん?)
山ほどツッコミたいところはある。あるが――、
種族がダンジョンで職業もダンジョン!?
もうそれ純度100%のダンジョンですよね?
え? 人間もモンスターも通り越して無機物に転生したってこと?
地球は一個の生命です。のガイア理論的なことなの?
舐めとんのか!!
確かにモノづくりは好きだが、モノになりたいとは言ってねえ!
俺はこの残酷な現実を受け入れるまで半日の時を有した。
しばらくは毎日更新です。