質問2何故わかるのですか?
遅くなりました。
あれから、シグレはすぐに噂が流れた。
あっという間に有名人である。
「元ヤンらしいよ」
「前の学校、退学になってたんだって」
「イジメの主犯らしい」
これらは初めの印象が一人歩きして
尾ひれがつきまくった結果である。
彼女は言い返す事もせず、誤解を解こうともせず、ただひたすらに窓を見ている。
違和感しかない彼女がやっと
''当たり前にいるもの''と認識されたころの事
だった。
誰も近寄ろうとしないその席に2人目の足音が聞こえた。そしてこう言ったのだ。
「僕は感情はある…と思う…」
遠慮がちに発したその言葉は確かに彼女へと
届いた。
彼女は綺麗に手入れされた髪を乱暴に掻き上げて言った。
「よかった。質問を返してくれる人がいて。」
心なしか少し微笑んだように見えた。
「ねぇ、なんで誤解とかないの?」
その男、”九重 イツキ”は不思議そうに言った。
「何故誤解だと思うの?」
質問を質問で返され、少し戸惑ったけれど
一呼吸置いてイツキは笑う。
「君の眼が優しいから…かな?」
そう言ってから少し照れたようにそっぽを向いた。
「じゃあ、私の仕事を教えてあげる。」
何故じゃあなのかわからないが、シグレは
足早に教室を出た。
まるで彼女を送り出すかのように静止画みたいな太陽が泳いだ。




