聖剣
「一回あれば十分よ!」
彼女は微笑みながら言った。
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剣士の彼女に渡した聖剣ルナカリバー。
それは特殊な素材を集めないと生成できない、最強クラスの武器だ。
「あれを作るのは大変だった」
僕は、作った時のことを思い出しながらいった。
最強クラスの武器を生成するには何度もモンスターを倒して素材をあつめなければならない。
僕のスキル『確率変動』を使っても、その回数をゼロにすることはできない。なんども戦う必要があった。
「すごい、軽いわね」
彼女はそう言いながら、素振りする。
もちろんグレートタイガーとの距離を測りながらだ。
この距離ならまだグレートタイガーの攻撃は届かない。
そして素振りはもちろん使用回数に入らない。
「そう、軽いんだ。君にちょうどいいと思ってね」
僕は言った。武器によっては男性向けのものも当然ある。重くて攻撃力の高いものだ。
これは軽くて歯が鋭い。
彼女のような身体能力の高い女性に向いているともいえる。
「よし、わかってきたわ!」
彼女はそう言って素振りをやめて、構えた。
重さと間合いを確認したのだろう。
彼女の戦い方は高い間合い管理の精度を必要としていると思われる。
「グオォォォォ」
グレートタイガーはかなり近づいてきている。
僕に足を止められてイライラもしているとおもう。
いまにも襲いかかってくる様相だ。
「さあかかってきなさい」
彼女は煽る。
自分から向かって行くタイプの戦い方ではない。
女性特有の目の良さ。
相手の動きを見切って、力を利用して攻撃するタイプだ。
なのである程度向こうからきてもらう必要があるからだろう。
「グオオオ」
グレートタイガーは飛びかかってきた。
彼女の装備だと、グレートタイガーの攻撃を受けると致命的なダメージを受けてしまう。
「そんな大雑把な攻撃じゃ当たらないわよ!」
そう言いながら彼女は飛びかかるグレートタイガーを潜るようにして避け、いまや彼女の後ろにいるタイガーに向かってそこから斬りかかった。
スパッ
「はい、終わり」
彼女はそう言って鞘にしまった。
確実な手応えがあったのだろう。
僕が認識できるそくどで確認していたのかもしれないが、倒れる姿を確認している様子はなかった。
「グオオォォォォォォ」
グレートタイガーは首を落とされ断末魔の叫びをあげながら消滅していった。
彼女は現在の能力よりはるかに高いレベルのモンスターをあっさりと倒してしまった。
「すごい!おみごと!」
僕は感動して言った。
この体術、勇者にまったく負けてない。
これはすごい人材を見つけてしまったかもしれない。
「これが・・・聖剣のちから・・・すごい・・・」
彼女はつぶやいた。