制限
「ねえ、手伝っても良い?」
僕は彼女に聞いた。
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「もちろんいいわ!助けてくれるの?」
彼女は僕に聞いた。
いいらしかった。
この確認は大事だ許可なく手を出すと揉める原因になる。勇者のパーティを追い出された実績のある僕ならではの配慮といえよう。
「オッケー!」
僕はそういいながら道具を取り出した。
許可がとれたなら遠慮なくやらせてもらおう。
もちろん僕は道具士だから純粋な戦闘員としてはカウントできないが、きちんと仕事はできる。
ヒュンヒュンヒュン
僕はその道具を振り回した。
「それは・・・?」
彼女は聞いた。
みたことない道具みたいだった。
たしかに彼女達には道具士はいないみたいだから馴染みは薄いだろう。
「まぁみてて!」
僕はそう言いながらその道具をグレートタイガーの足元目掛けて投げた。
この道具は重しと重しを縄でつないだ単純なトラップ。
「これは・・・!」
彼女たちは言う。
ヒュンヒュンヒュンと回転しながら、モンスターの方に向かって行く重しのトラップ。
「グオオォォォォォ」
グレートタイガーは足元の動きを奪われ地面に倒れた。派手に倒れてくれた。これで時間が稼げる。
「よし」
僕は言う。思った以上にうまくいった。
「すごい!」
彼女は言った。そう、彼女達からすれば格上のモンスター。一行動で動きを止めた。
「うん、でも安心するのはまだ早い。すぐ起き上がってくるよ。その前にこれを渡しておくよ」
僕は言って彼女に剣を渡した。
この時間つくるために重しのトラップ『ボーラ』を使ったのだ。
「これは・・・」
彼女は驚く。
そう、伝説として伝わっているからだ。
「うん、聖剣ルナカリバー」
僕は言う。元のパーティにいたときに手に入れたものだが、最強の武器が手に入り使わなくなっていた。これも剥ぎ取られなかったから、彼らはやはりそんなに悪徳ではないのかもしれない。
「すごい・・・なぜこんなものを!」
彼女は興奮ぎみに聞いた。
彼女達はかなり弱い武器で戦っている。
その彼女達からすれば興奮するのも頷ける。
「うん、その説明は後でするけど、その前に注意点が一つ」
僕は言う。
そう大事な注意点だ。
「注意点?」
彼女は聞き返す。
「そう、その聖剣ルナカリバーはあと一回しか使えない」
僕は言った。そう、この世界には武器の使用制限があり、僕にはその回数が見える。そしてこれは残り一回しか使えない。
「あと一回!?」
彼女は驚く。
「うん、だけど、君の体術があれば一回で十分だろう?」
僕は言った。
そう、彼女達は弱いわけではない。
武器が彼女達の実力にあっていないだけなのだ。
「グオオオ」
そうこうしているうちにグレートタイガーは起き上がってきた。
「さあきたよ!いけるよね?」
僕は彼女に聞いた。
「一回あれば十分よ!」
彼女は微笑みながら言った。