追放
「追放?」
僕は聞き返した。
「そう、この先は戦いはより過酷になるこれ以上君を連れて行くことはできない」
勇者は僕に言った。あくまで僕の身体を心配してという言い方だった。流石に勇者だけある。勇者は戦闘員というよりはリーダーという側面も大きい。
「なるほど、一応聞くけどほんとにいいの?」
僕は聞き返す。
おおかたメンバーに僕が無能だ、報酬を分配するほどのこともないということを言われたのだろう。
そろそろ冒険も終盤で、魔王討伐の報酬の分配について考えた人がいるのだろう。
しかし、僕はわかっていた。僕がいなくなったらこのパーティでは魔王を倒すことができないことが。
なので、一応聞くという言い方をした。
「ここまで君は大きな仕事をしてくれた、この最強の武器も君のおかげで作ることができた」
勇者はそう言いながら、剣を見せた。
僕が作った最強武器。ほかのメンバーの武器も最強にしてある。道具士の仕事は素材の収集、武器の生成だ。
「ああ、なるほど、その最強武器があるからもう僕はいらないということなのか」
僕は聞き返す。話はわかった。全員分の最強武器があるから僕の仕事は全て終わり、ここで追放すれば魔王討伐報酬の山分けの額が増えるということのようだ。
「そう、いままでありがとう。メンバー全員分の最強の武器を作ってくれて、ここからは僕たちの戦いだ」
勇者は言った。
あくまで道具士の僕に危険なところに行かなくていいようにするというていのようだ。
「なるほど、ベンチャー企業の創業メンバーが上場時には必要なくなってクビになっちゃうみたいな話だね」
僕は言った。現実世界でもよくある話であった。チームが成長すれば役割は変わる。そういうことはありえる。
「???」
勇者は意味がわからなかったらしく不思議そうにこちらを見る。
「ベンチャーの場合は株をもらえるからそれでもリターンがあるけど、異世界だとそういうわけにもいかないか」
僕はつぶやいた。
「というわけで今日で君とはお別れだ」
勇者は言った。
「うん、わかった、もう一度聞くけどほんとにいいの?」
僕はもう一度聞いた。
「構わない」
勇者は言った。
ここで最後のチャンスを失った。
彼は道具士が道具を生成するだけだと勘違いしているようだった。
この世界はそんなに甘くない。
武器には使用回数がある。
そのままで無制限に使えるわけじゃない。
ハズレスキルと言われていた「確率変動」
このスキルは毎回S級武器が当たるというようなわかりやすく派手なスキルではなく、毎回大事な錬成石などが多めに出るというスキル
そのおかげで、回数制限を気にすることなく彼らは最強武器をつかっていただけなのだ
「僕がいなくなったら、その最強の武器すぐ壊れちゃうんだけど」
僕は離れて行く勇者に向かってつぶやいた。
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