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在庫確認
だんなさまvsおくさま。
扉を開けるなり、そのひとは両手を上げて降参のポーズをしてみせた。白銀の髪がふわりと揺れ、光を透かした。
「お菓子はないのでいたずらをどうぞ」
そのひとの青空に似た瞳いっぱいに自分だけが映っているのが何だか恥ずかしくてイザベルは目を伏せる。
「申し訳ございませんが、そちらは品切れです」
幼い頃、絵本で知った妖精のいたずらを、このひとに仕掛けたことがある。誰かをひどく驚かせたり困らせたりするいたずらを決してしてはいけません、と母に静かに叱られたのを覚えている。
「それは残念」
そのひとは軽い声音で返し、流れるような所作でイザベルの左手を取った。そして、薬指にそっと口付けを落とした。イザベルの旦那様であるそのひとは穏やかに笑った。
「これで入荷はできましたか、奥さん?」
少し未来のヘンリーとイザベル。ハロウィン編でした。





