予告ありの贈り物
王子様とお嬢様。
「お待ちしておりました」
つい心からの声が漏れた。大げさですよ、と少女はくすぐったそうに笑う。淡い金糸に似た髪が、冬の青空に緩く揺れた。
彼女がヘンリーに贈ってくれたのは、星祭りを二人きりで散策する時間だった。新年を迎え、遠い春を待つまでの安寧を星に祈る冬の祭りである。もちろん婚約時の誓約があるので少し離れた位置に護衛が控えているし、露店での飲食も禁止されている。けれど、イザベルは友人と兄君に協力を仰ぎ、露店の人気の品について、女学院生徒と研究所所員から統計を取った。結果からヘンリーと相談して選んだ品を侯爵家の料理長に作ってもらうよう頼んでくれたのだ。散策の合間に馬車まで戻り、舌鼓を打つ算段だ。
冬が終わるまでは学会の準備のため、しばらく彼女と会えない日々が続く。けれど、今夜の一番目の花火が上がるまでイザベルもイザベルの時間も二人だけのものだ。
丁寧に腰を折った。華奢な右手を宝物のように取り、乞う。
「ではレディ。今日は一日エスコートをお願いできますか?」
お任せください、とイザベルはやわらかに笑う。宝石箱のとっておきのアメジストに似た瞳いっぱいに星を煌めかせながら。
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本編前日譚の贈り物大作戦編「春よ、こい。」最終回です。全25本、お付き合いいただきありがとうございました!





