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すてきな挑戦状
おじょうさま。
学院に入ったばかりの頃、とても楽しみにしていたことがある。
「おかえりなさいませ。お嬢様、挑戦状が届いていますよ」
爺やの知らせにイザベルは胸をときめかせた。廊下をつい駆け出してしまい、爺やと侍女に「おやおや」と笑われた。
弾む息を整え、慎重にサロンのピアノの前に座る。イザベルの大好きなお兄様の文字で『挑戦状』と丁寧に綴られた封を、どきどきしながら開ける。新しい楽譜のタイトル横には、次のお休みからこのワルツをご一緒しませんか、とメッセージがあった。
『このワルツは『子猫のフーガ』よりも指使いがむずかしいけれど、連弾で溶け合う音がとてもきれいなので仕上がりを楽しみにしています』
『今回はこの小節まで勝負をお願いします。当日にここまで一緒に弾けたら学院で咲いている花の名前を教え合う勝負も申し込むのでお忘れなく』
次のお休みまでに新しい曲の練習も学院を隈なく散策するのもがんばろう、とイザベルは決意した。それから頬を緩めて、端正な文字で書かれたヘンリーの署名を指でそっとなぞった。





