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君といつまでも

王子様のお兄様たちと王子様とお嬢様

 二年前、周囲が困惑するほど末弟が大きく気を落とした事件があった。至急解決するよう叔父から命じられ、末弟に特効薬を届けたことがある。そして、末弟の回復を待つ間、叔父ご贔屓の宮廷画家に、モデルを務める叔父の猫の添え物として次兄と共に部屋に閉じ込められた。次兄が飽きてうとうとし始めた頃、末弟と婚約者殿がいつも通りの陽だまりのようなやわらかな笑みを浮かべて顔を出しに来たのは記憶に新しい。

 次兄も自分も末弟のおねだりの内容を尋ねる悪趣味なことはしなかった。しかし、しょげた原因が解決したかどうかは懸念事項であった。叔父が連日寄越す早馬の知らせは正直に言って迷惑だったのだ。厄介事は速やかに取り除く。それが彼の信条であった。


「ところでレディ。刺繍の練習の進みはいかがかな。君がずっと熱心に練習に励んでいると弟から話は聞いている。そのまま熟成させるのはもったいない。そろそろ君の王子様に披露してもよいのでは?」


 思い切りむせた末弟の背中を次兄が苦笑しながら撫でている。やはりまだ解決していなかったようである。自ずと眉間に力が入る。

 少女は淡い菫色の瞳をおろおろ彷徨わせ、やがて観念したように告げた。

「……父と兄から図案の合格点をもらえていないのでまだお渡しするわけには」

「なるほど、そういうわけか」

 点と線が一気に繋がり、第三王子は深く頷いた。目を眇め、息を吐く。

「ヘンリー・ロー。一つ確認するが、お前にとって魔術式や魔術陣、その他魔術に関する図形を描くのはいつものことだな?」

「はい。自分は召喚科所属ではないので魔術陣はそれほどではありませんが、他のものは仕事柄毎日描きます」

「ならばお前が図案を描け。タイニー・ベル嬢はそれを刺繍してヘンリー・ローに贈りなさい」

 末弟がぽかんとを口を開いた。少女も大きな瞳を三度瞬かせたが、すぐに頬をほのかに染めて「はい」と頷いた。

「さすが氷の王子様、仕事が速い! さあ、二人の初めての共同作業に乾杯だ、乾杯!」

 ひゅう、と次兄が口笛を吹き、美しい所作でティーカップを掲げた。

「あの……よろしくお願いします」

 少女はおずおずと上目遣いに末弟を見上げて袖をきゅうと掴んだ。末弟は青い瞳を蕩けそうなくらいやわく細めて笑う。こちらこそ末永くよろしくお願いします、と。

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