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ちょっと前の噂
王立魔術研究所のひとびと。
「おい、聞いたか? 隣のオーキッド先生は魔獣の召喚をされるおつもりのようだぞ」
「確かなのか、その情報」
「ああ。この食堂ですれ違ったときにも資料室でお見かけしたときにも見たことがない魔獣が大きく刺繍された布を大事そうに持っていらした」
「それなら俺も見たぞ。見たのはご子息のニールくんの方だが、ひしゃげていたり、端が尖っていたり、丸とも四角とも形容しがたい魔獣を刺繍した布を持っていたぞ」
「ハンカチ程度の小型のものだが、特に先生はこのところ年単位で毎日持ち運んでは悦に入って観察しているのを他の研究科の者たちも目撃していると聞く。親子二人でかなり大掛かりな術式を用いて召喚する計画なのだろう」
「本職である我々召喚科にも手伝いの依頼が来るかもしれないな。専門ではないお二人のサポートがいつでもできるよう、気を引き締めるぞ」
ちょっと前の王立魔術研究所の噂話です。おなじみの解説と実況は次のおはなし以降でお送りしています。





