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贈り物大作戦会議

お嬢様とご友人。

 放課後、教室で友人から取り調べを受けた。徹底的にくすぐられ、殿下の贈り物とお誘いについて洗いざらい吐かされた。口元を綻ばせ祝福する友人を恨めしげに見つつ、イザベルは頬をぺたぺた触る。「顔だけじゃなくて、今日は何もかもふわふわしていましたからねえ」「歴史の授業中に数学の教科書を広げていたしねえ」「席も一列間違えたまま一日終えましたし……理由がわかると、このふわふわも納得しかないですね」「いいじゃないの。こういうのでいいんだよ、こういうので」等、言いたい放題である。


「で、君は一体何を悩んでいるのだね、ふわふわのイザベルくん?」

 マーガレットは顎の下をふさふさ撫でつけるような動作(非実在顎髭を整えているつもりらしい)と、見えないパイプを右手で揺らす真似をしてイザベルに水を向けた。


「今年のお誕生日は無理ですが、今後殿下に素敵な贈り物のお返しをできないかなと」


 イザベル・オーキッドは幼い頃に、それこそ就学前のことであるが、ヘンリー第四王子殿下との正式な婚約が決まった。その際に二人とその家族は王室といくつもの誓約を交わしている。その一つが、税金での贈り物は御法度ということだ。以来、ヘンリーとの贈り物のルールは、ささやかなものを贈り、その喜びを互いに分かち合うことが暗黙の了解となった。

 また、イザベルの父は小遣い制度を設けてくれ、娘に経済や資本、労働と雇用について少しずつ教えてくれた。

 幼い頃は、小遣いを貯めて店で購入したものを贈ることに達成感を味わい、他に何も疑問を抱かなかった。しかし、十年余り学生生活を送ることで、意識が変わった。父がイザベルたち家族のために苦労して働いて得た収入から賜った小遣いでそのままヘンリー殿下にプレゼントを贈り喜ばれるのは何かが違うのではないか、と。


「まあ確かに。気持ちが大事とはいえ、学生の私たちは言ってみればお父様の収入で相手に贈り物をしているわけだから、そもそも贈り物そのものに気が引けるわね」

「そうですねえ、イザベルを介さずにお父様から直接殿下に年単位で――殿下のお給料三ヶ月分に当たるお小遣いを渡してもらうのとも違いますし……」

 イザベルの悩みにマーガレットとグレイスも深く眉間に皺を刻んだ。と――グレイスが両手を合わせた。深緑の瞳を輝かせて声を弾ませた。

「先人の知恵、小説や舞台を参考にするのはいかが? デビュタント前のご令嬢や成人前の少年が主人公だったりするでしょう」

「うん、いいね! 舞台だと最近は、『あの鐘を鳴らすのはそなた』が人気だよね」

「ええ、なかなかチケットが取れないってお姉様が嘆いていたわ。ロングラン上演が決まったからその間に何とか滑り込めたら良いのだけれど」


「なるほど! 閃きました!」

 唐突に光が見え、立ち上がる。がたんと椅子が後ろに倒れたが、放っておく。

「まずお小遣いを元に資金を増やすのです。キング船長も好事家に囚われた熱血エースを救うために街の紳士倶楽部に向かい、ポーカーで夜会に乗り込む資金を増やしていました。賢いジャックが特訓に夜な夜な付き合ってくれたものです……」

 イザベルが素晴らしい閃きを披露すると、友人二人はやさしく綺麗に微笑んでくれた。

「……まずは冒険小説ではない他のジャンルをもっとたくさん読んで三年くらい学ぶことから始めようね」

「ええ。三年後は頑張りましょうね。イザベル、あなたならきっとできるわ」

 二人は鞄を持ち、ごきげんよう、と華麗なステップで教室から退出した。イザベルは三度大きく瞬いた。

「メグ! グレイス! 三年は遠すぎませんか!?」

 イザベルの声が教室にむなしく響いた。

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