少年は大志を抱く
おうじさまとおじょうさまとおにいさまズ。
目の前の、陽に透けた金の髪がゆっくりと遠ざかる。まっすぐとこちらに向かう紫水晶の瞳はわずかに揺れていた。迷子になった子犬のよう、とはこういうことかなと思い、眉を下げてイザベルに手を伸ばす。と――少女の身体が大きく傾いだ。ヘンリーが急いで立ち上がり自分の方へ引き寄せるよりも速く、目の前から大きく遠ざかった。
猫のぬいぐるみごと兄君に抱き上げられたイザベルが大きな目を三度瞬かせた。動く椅子から身を乗り出したことへの小言を静かに受け止め、「ごめんなさい」と兄君の肩にやわらかそうな頬を寄せた。兄君が頷いて頭をぽんと撫でた。その所作に従い、淡い光を散らす髪が肩から滑り落ち、ゆっくりと揺れる。届かなかった手のひらを、見る。すると、笑い声が耳に落ちた。そこで自分も腹に腕を回され抱えられたことを知る。
「大きくなったなあ、ヘンリー・ロー。抱えるのがやっとだ」
「……もっと大きくなります」
悔しさが隠しきれない声だった。ほんの少し、その青い瞳が見開いて、けれどすぐにやわく細まる。そしてただ静かに「待ってる」と微笑う次兄に、ヘンリーはただ頷いた。
次兄は侯爵子息と左右に分かれて座り、中央のヘンリーの膝にイザベルを載せた。そして、ギャロップの連弾はテンポが激しいからレディを守るようにと厳命してきた。
▼・ᴥ・▼.。oO(またいぬのはなししました?)





