ふたりのおにいさま
おじょうさまとおうじさまとおにいさまズ。
カーテンの刺繍から零れた陽の光が頬に落ちた。椅子の座面が左右に伸びているのだ。
父の最新作の素晴らしさをヘンリーおにいさまにも体験していただいている最中であるが、イザベルは猫のぬいぐるみを力いっぱい抱きしめた。遠ざかるヘンリーおにいさまと目が合った途端、胸がきゅうとなったのだ。両手では数え切れないくらい会ったはずの困ったように微笑むおにいさまなのに、今日の瞳は冬の青空の静けさに溶け込んでいくような色をしていた。あのキング船長が六巻で今までの大冒険を振り返り、「泣く子どもよりも胸に強く迫るものだった」と語った、雨に濡れた子犬とはこういうものだったのかなと理解する。そして、自分も同じ表情をしているのだろうなと思った。
ヘンリーおにいさまに手を伸ばそうと身を乗り出した途端、身体が大きく上に浮いた。イザベルはまばたきを三度繰り返す。顔を上げれば、よく見慣れた菫色が見えた。
「まったくお前という奴は……危ないだろう」
兄の呆れたようなため息が降ってきた。ぎゅうと抱き締めてくる腕がちょっぴり痛い。
「君のお兄様は君が心配でたまらないんだ。さてレディ、次はお兄様たちと遊ぼうか」
第二王子殿下がやさしさを落とすように笑う。そして、きょとんと首を傾げたヘンリーおにいさまを流れるような美しい所作で抱っこして、綺麗に右目を瞑ってみせた。
▼・ᴥ・▼oO(いま、いぬのはなししました?)





