表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/81

ひみつ

おじょうさまとおかあさまとおとうさま。

 父の膝と薄いクッションを枕に、イザベルは机で歌う子猫型自鳴琴を眺めた。やさしく甘いメロディーが耳を通り、つい先ほど知ったばかりの秘密をうとうと思い返す。

 いつもの君のねこちゃんの代わりに、とヘンリーおにいさまからいただいたものだ。母にそれを見せると、綺麗な菫色の瞳が一瞬だけ丸くなり、すぐにゆるゆると細くなった。にこにこ楽しげなその笑みは何かを知っている顔だ。母の袖をきゅうと掴み、教えてほしいとねだる。すると、母は唇の前に細い人差し指をぴんと立てた。

「白銀に青。ヘンリー殿下とおそろいの色ね」

 それからこれは皆が知っている秘密なのだけれど、と笑みを深めて母は耳元で囁いた。


「自分の瞳や髪の色のものを相手に贈るときは、『あなたのおそばに』とか、『あなたをお守りします』という願いを込めるものなの」


 つい三度瞬いた。それから頬がじわじわ熱くなるのが分かった。そして、あの時のヘンリーおにいさまを思い出して胸のあたりがきゅうとなり、母に抱きついたのであった。



「みんなが知ってるひみつ……」

 とびきり素敵な秘密に頬が緩む。熱を帯びた頬を冷ましたくて父の膝に擦り付けるように身体の向きを変える。「なぞなぞかな?」と父が笑みを落とし、髪を撫でてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ