あいつこそが王子様・侯爵子息編
おにいさまとおとうさまとおじょうさま。
魔術式自鳴琴の静かな音色が書斎に響く。妹は父の膝枕でうとうとと舟を漕いでいる。父のペンを動かす音が不規則なリズムを刻み、子猫の楽曲にささやかな色を添える。
オーキッド侯爵兄妹にとっての魔術式自鳴琴といえば、父が設計した金糸雀型のものである。金糸雀といっても大層立派な大きさで丸々としたボディのものであった。父曰く、プロトタイプなので術式を色々組み込むのにちょうどよい大きさを選択した結果とのことだが、現在は随分と小型化が進んでいるようだ。小鳥型はともかく、子猫型は見慣れないのもあってついつい観察してしまう。術式も新しい型が組み込まれているし、術式の簡略化も進んでいる。術式展開と魔力伝導の効率の良さの追求によって、より小型でより軽量式が誕生したようである。魔術の進化に深いため息が漏れた。
上品な白銀の被毛に青空を思い出す瞳の小さな子猫。ふと脳裏に閃くものがあり、ニールはぴくりと眉を上げた。白銀と青。ヘンリー第四王子殿下の髪と瞳の色彩である。夜会のマナーと伝統を母と学校に絶賛詰め込まれ中の侯爵子息は頬を掻く。自分の色を相手に贈るということは、その色に染め以下略である。つまり、妹は大事にされている。
幸せそうに寝息を立てるイザベルの頬をそっと撫で、悪巧みに余念がない父には内緒にしておこうとニール・オーキッドはこっそり大いに決意した。





