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返却はお早めに
第四王子殿下と第二王子殿下
「顔を見せて女の子にあんなにもがっかりされたのは初めてだよ」と次兄は美しく整った金色の眉を下げた。残念だと大仰に嘆いてみせる割に声音はどこかやわらかい。
おひめさまから、と手渡されたのは白銀の毛玉――猫のぬいぐるみだった。首元のリボンに結ばれた紙片にあるのは「とくべつにすこしだけおかしします」という丁寧な綴り。この数日間寝台で耳が痛くなるほどに周囲から浴びせられた慰めの言葉は、そこにはない。
込められた願いが何ともいじらしくて、微笑ましくて。つい緩む口元を隠すように、陽だまりの匂いがする白銀のふかふかの腹にまだ熱の残る顔を埋めた。