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大事なのはハート

おうじさまとおうじさま。

 次兄の告げたことが、一瞬どころか数秒は理解できず――ヘンリーは目を瞬いた。

 やれやれというように次兄が目線を下げた。きょとんとしているこちらの肩を掴み、すすっと引き寄せる。そのまま声を潜め、次兄が呟いた。

「そうか、お前、まだ知らなかったのか。あの魔術式自鳴琴を考案して世に送り出したのはオーキッド侯爵だ。侯爵家とお前は末永くお付き合いするわけだし学ぼうね」


 ワンテンポ遅れてからヘンリーは左手で作った拳で右の手のひらをぽんと打った。

 さすがは侯爵だと納得する。侯爵は論文で見つけたとかいう輪を作り、ヘンリーたちが近寄ることさえ叶わなかった猫を颯爽とその中心に誘い、位置を固定してみせたのだ。更にあの海洋冒険譚を愛読していたと知り、嬉しくてつい熱心に質問を重ねてしまった。だが、侯爵は嫌な顔をせず、海や星、植物と猫についても惜しみなく話してくれた。

 しおしおとしぼむ勢いで「発明者のお嬢さんに贈るのは良くなかったですかね」と呟く。結局、自分たちは猫を触れなかった。いつもの相棒を連れていない少女が寂しそうだったのと、相棒が自分の部屋にある自鳴琴とそっくりだったので譲ったのだ。とろけそうに滲んで煌めいた菫色の瞳の光が、今もヘンリーのまぶたの裏できらきらしている。

 けれど、兄は破顔した。贈り物の大原則を守れたお前には花丸を授けよう、と。

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