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我が家のおとうさま

おにいさまとおとうさまとおじょうさま。

 課題に使った地図を書斎に戻しに行くと、部屋の奥から懐かしい子守唄が聞こえた。

 橙色に照らされた長椅子に父が寄りかかり、何やら真剣に計算式や術式、あれこれ図面を書き付けている。その膝の上では薄いクッションを枕にして妹がうとうとしていた。かつて、父の膝は硬いと文句を言ったことがある身としては実によい判断だと思う。

 子守唄の主は机の上にいた。白銀の被毛に青い目の小さな子猫がメロディーを歌っているのである。王都ですっかりお馴染みとなった魔術式自鳴琴である。夜に子どもにぜんまいを一回巻かせると、その子が気持ちよく寝つくまでやさしく静かに歌い続けてくれるという代物だ。少なくとも自分が幼い時分には小鳥型が主流であった。今は子猫型もあるのだなと手に取り、ニールがしげしげ観察していると、父が片眉を上げた。


「ヘンリー殿下からイザベルがいただいたものだ。殿下は穏やかで気配りもできてキング船長贔屓の見所のある少年で何よりだが、まだまだ勉強不足でいらっしゃる」


 歌うのが大の苦手である妻のためにこの自鳴琴の考案と開発をした王立魔術研究所付きの魔術師は嘆息する。発明者の娘に贈るにしてはセンスがないと苦言を零す様は立派な舅様だ。「父上の自鳴琴が世に浸透した証であり誇るべきことでしょう」とそっと指摘すれば父より先に妹のふわふわした返事があった。おとうさまはすごいのです、と。

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