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レベルアップ・王子様編

おうじさまvs.おうじさま

めでたしめでたし。

 長椅子に寝そべった次兄は美しい金色の眉を寄せ、深々と吐息した。


「……また一枚、世に名画を誕生させてしまった」

「兄上、お疲れ様です」


 結局、あの後は室内に集合したままお開きとなった。あれこれ注文する画家に従い、オーキッド侯爵を中央に挟んだままヘンリーとイザベルは腰掛けておしゃべりをした。イザベルを招待するために叔父に借りた猫は、叔父が懇意にしている宮廷画家を呼ぶことが条件での貸与だったので何も文句を言えない。叔父の屋敷では従兄弟たちよりも猫の肖像画の所蔵数が多いのではないかという次兄の冷静な指摘にヘンリーも深く頷いた。

「あの画家殿、叔父上とご自慢の猫が後ろにいる限り仕事も家も安泰だな」

 にゃあと猫が兄の胸の上で返事をした。顎を指で撫でてやり、次兄は眉を下げる。

「お前はタイニー・ベル嬢ともねこちゃんとも仲良くなれず残念な一日だったな……」

「そうでもないです。侯爵と少し仲良くなれました。博識で愉快な方ですね」

 イザベルとは次もこれからもこの先もあるから良いのだと笑いかけると、兄の姿が消え、鈍い音がした。「王子様力が健やかで何より」とうめく次兄の声が何故だか床付近から聞こえ、椅子で猫が大きな目を丸くしたまま立派な尻尾をぴんと立てていた。

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