借りてきた猫
おうじさまとおじょうさまwithおとうさま
「気持ち良さそうに寝ているね」
声を弾ませてかわいいと連呼するイザベルに、ヘンリーも笑い返した。二人の視線の先には陽光を浴びる大層立派な毛玉――ではなく、叔父の家から借りてきた猫が丸くなっている。猫は青い天鵞絨のリボンで丸く縁取られた大きな輪の中でくつろいでいた。
イザベルがうっとりと吐息した。紫水晶に似た大きな瞳がきらきら輝いている。
「近くだと、息をするときに背中もお腹もふわふわ動くのがよく見えますね。かわいい」
「うん。この装置を作ってもらわなければ、王子様力のない僕はきっと知らないままだった。侯爵、貴方のように知識を深めるにはどのようにしたら良いのでしょう?」
侯爵が雑誌論文を元に作った輪に猫を誘い、存在位置を固定することに成功したのだ。
「恐縮です、殿下。そうですね――古くからの情報にも新しい情報にも目と耳を向けて好奇心を錆付かせず、確かな分析と実践を怠らないことが肝要です」
尊敬の念を込めて見上げると、侯爵はほのかに笑う。凪いだ翡翠色の瞳は、海洋冒険譚の船長のように見る者の心を落ち着かせる力があった。頷き返し、彼は心に深く刻む。
お茶の時間を知らせに来た次兄が瞠目して「いつもより猫がでかいな?」とすぐに顔を引っ込めた。オーキッド侯爵も、彼を挟んで座る二人も分からずに首を傾げた。
ฅ^•ﻌ•^ฅo0○(猫転送装置はよい文明……)





