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星かげさやかに
オーキッド侯爵と家族の穏やかな夜
たおやかな星明かりの届くソファでは上の子が背もたれに深く寄りかかり、手元の本に妻譲りの菫色の瞳を一心に注いでいる。その隣では下の子が大きな猫のぬいぐるみを枕にゆらゆら船を漕いでいた。星影に静かに照らされた顔は兄妹そろって綻んでいる。どうやら楽しい大冒険に出ているようだ。
机の上に積まれた本を整えていた妻がこちらを向いて微笑み、そっと人差し指を立てた。やや草臥れた青い装丁のそのシリーズは少年時代に何度も胸を熱く焦がした海洋冒険浪漫譚だった。うっかり者の船長と賢く陽気な鯨たちとの懐かしい再会である。
オーキッド侯爵は目をふっと細めた。





