大きくなったら
第三王子と弟王子とその婚約者のお嬢様。
弟の小さな婚約者が声を弾ませながら宣言した。
「大きくなったら王子様になります!」
叔父の屋敷の子猫たちは、弟とこの令嬢に好奇心いっぱいに構い倒され、逃げ出してしまった。結果、弟より付き合いの長い自分の元へ母猫が子猫をせっせと避難させた。膝の上でみゅうみゅう鳴いて甘える子猫たちは、ふわふわとあたたかくて心地よい眠気を誘う。長椅子にもたれて風に耳を澄ませていたら、情熱たっぷりの宣言が落とされた。
彼は、その台詞に心当たりがありすぎて動揺する。先ほど、袖をきゅうっと引かれ、猫と仲良くするコツを上目遣いのイザベル嬢に懇願されたのだ。菫色の大きくてきらきらしている瞳を一層輝かせた少女は、なるほど、世に言う妹の如き可愛らしさだった。身長差は仕方のないことなのだが、弟の羨望の眼差しがうっとうしかったので「王子様力が高いからだよ」と軽く返しておいたら、どうやら本気にとってしまったらしい。
「……王子様のお嫁さんではだめかな?」
弟の声が客間にぽつりと落ちた。ここまで情けない声音は初めて聞いた。
第三王子は噴き出しそうになるのを堪え、弟と未来の義妹に、弟の王子様力を高めることが一番の近道であるとどう示したものか心の中で問答した。





