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君よ知るや常春の国
侯爵子息、公爵閣下の屋敷に妹のお迎えに行くの巻。
招待の礼と妹を迎えに来たことを丁寧に伝えると、公爵閣下は人差し指を唇の前に立てた。静かにという言外の宣告に、息を止め姿勢を正す。
扉を開けるとそこは――常春の国だった。足を踏み入れたままの姿勢で固まっていたら、閣下がとろけきった笑顔で告げた。至急呼んだ画家の仕事が終わったところなので実にちょうど良かった、と。
広い客間とキャンバスには大きな猫のぬいぐるみを枕に妹と第四王子殿下がうとうとと舟を漕ぎ、第三王子殿下が子猫四匹と母猫に囲まれるように金色の長い睫毛を伏せ長椅子に身を預けている姿がある。そよぐ風がカーテンの刺繍を明るく透かし、漏れる光が三人の髪を淡く照らした。
画家に会釈を交わし、一つ息を落とす。それから侯爵子息は頬を薔薇色に染めたまま、すやすや寝こける妹を起こす算段を始めた。





