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出会い

時間が空いてしまい、すみません…

私は今、誰にも声をかけられずに一人寂しく紅茶を飲んでいる。色とりどりの花が咲き誇る庭園で。


円形に配置された席で、前を向けば向かい合って微笑み合うロベルトとメリス王女が視界に入る。だから私はひたすら机だけを見て紅茶を少しずつ口に運ぶのだ。むしろそうするしか出来ないし、そうさせるためなのだから仕方ない。だってこれはメリス王女がロベルトとお似合いでしょうと私に見せつける為だけに開かれたお茶会なのだから。招かれている他の人間も彼女の取り巻き。それはもう私だけ苦痛と嫉妬を味わうように出来ている。だから私はただひたすら一人でお茶会がお開きになるのを待っているのだ。なんてつまらないお茶会なのかしら!


それにしてもこの紅茶は香りが実に豊かで美味しい。お菓子も子爵家では用意できない高級な美味しさなので帰るまでにさりげなくたくさん食べておこうと思う。これくらいしたってバチは当たらないでしょう。


「貴女、パートナーとご一緒じゃなくて恥ずかしくないのですか?」

横に座ったカサリー子爵令嬢が突然小声で話しかけてきた。カサリーは私より2つ年上で少々変わり者と称される人物だ。メリス王女の容姿がお気に入りらしく、大好きな絵を描くときに良く題材にするほどらしい。その彼女が私に話しかけてくるとは一体どんな風の吹き回しなのだろう。


「カサリー様もお一人でおいでなのではないですか?」

「私はそもそも婚約者もいないのよ?でも貴女はいるじゃない。あの金色の君よね。」

カサリーは眉間にしわを寄せて首を揺らす。庭園の草木の緑のなかでカサリーの金色の髪は財宝のように美しく煌めいた。なんて光る綺麗な髪なのかしらと思いながら、ふと首を下げて胸元に少し垂らした自分の毛を見るけれど茶色の普通よりやや綺麗なくらいの髪が見えるだけ。あとで彼女に手入れの方法を聞いてみよう。少しでも美しくなれば彼は私を見てくれるかしら…


「おっしゃる通りなのですけれど、見ての通りですわ」

「黙って盗られるのを見ているつもり?」


カサリーは手元に取り分けられたオペラを口に入れる。黒く光り輝くほろ苦いケーキはまるで私の醜くて誰にも見せられない嫉妬心のように見えた。


「そうしたいのも山々ですけれど勝てないですから…ね…」


シュッ!

伏せた視界の端で何か金色のものがものすごいスピードで振り下ろされるのが見える。

良く見ればお皿に触れて音が出ない程々の深さにフォークがオペラに突き刺さっている。違う、さっきまでの美しいフォークの持ち方ではなくて短剣の持ち方になっている…あれ、もしかしてカサリー子爵令嬢は本当はとても怖い方なのでは…?


「あ、あの、今何かすごい「貴女、意気地なしにも程があるわよ。いい?婚約者を黙って盗られるほど愚かしいことはないわ。例え格上でもダメよ。だって貴女、彼が好きなんでしょう?」

彼女はチャームポイントである大きな翠色の猫目をより吊り上げ、見事な金色のふわふわな髪の毛を揺らしながら小声で怒った。何故私は初対面の彼女に怒られているんだろうか。カサリーの反対の令嬢に助けを求めようとしたが令嬢は談笑中で少しも目線が合わなかった。悲しい。


「た、確かに私は彼を想っておりますが…」

「…が?」

「ですが、私より彼女の方が全て上ですので…」

「だから諦める?」


答えられなくて、私はそっと下を向いた。握り締めた手は少し冷たくて春風の暖かさもわからない。紅茶の表面に浮かんだ顔はみっともなくて情けなくて泣きたくなった。


「全く、心にも思ってないこと言わないの。全然諦められない顔してないじゃない。」

「そ、そんなこと…」

「私、自分に嘘ついて綺麗事しか言わない人、嫌いだわ。」

「…っ!すみません…」


私は俯いたまま、絞り出した小さな小さな声で謝るしかできなかった。

最後までお読み頂きどうもありがとうございます!

この続きは書き終わっているので早めに投稿できると思いますのでまた読んで頂けると幸いです!

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