つばさ【詩】
ココアのぬくもりが腹の底でフェードアウトしてった
母さん
こんな日はうちにいたいよ
手提げの中でそろばんの鳴る音が
まるで寄ってたかってがなり立ててるみたいな
めずらしく積もった雪は
薄く なかばとけて 透明に
公園をおおってた
ショートカットしようと足を踏みいれたら
先客がいたようで
象形文字って言うんだっけ?
規則正しく刻まれた小さなしるし
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
ψ
雪のうえ
途切れたその先は――
なあ
どこまで飛んでったの
どうして飛んでったの
なにを目指したの
飛ぶって何
空を滑るってどんな気持ち
全速力で走ってジャンプしたら
胸にぽっと火がともり
そろばんがじゃんばららと鳴った
はばたくような音だった
母さんが飛べと願った
ぼくの名はつばさ
2019年12月31日制作。
羽ばたき去っていく令和元年を振り返って。