表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

清宮、謝罪する


バイトリーダー清宮は憂鬱だった。21時から翌朝6時までのバイト、至って普通のフルタイム勤務だが相方が居ない所謂ワンオペと呼ばれるものだ。こうなったのもつい先日バックレを決めた佐々木のせいなのだが臨時休業なんてものはコンビニには存在しない、バトンリレーで交代する人間が居なければ夕勤の人間は帰れなくなる。清宮に逃げの選択肢は無いのだ。

「清宮さん今日大変ですね」そんな言葉を夕勤の男子高校生中井君に掛けられながら苦笑いで「そんなことないよ」と返答するも嫌な予感しかしなかった。ワンオペでは何かしらのトラブルが発生するというのは清宮の持論であり高確率で実際に何か起こった。

コンビニ業務の始まりはレジの点検から始まる。レジ内の紙幣、小銭、クーポンなどを数えて差異がないかの確認をする。これを怠るとどこで不足が出たのか分からなくなる為、人の切り替わりの時間には必ず行う。次に返本、期限の切れた本や雑誌を登録し返本する作業。週刊誌が先週号と今週号並んでいたら返本のミスがあったのだろうと思ってほしい。それが終われば廃棄、フライドフーズ、陳列、入荷等々多岐にわたる作業が有るのだがそれは追々。

中井君が退勤し一人で店番を任された清宮はレジの前で常連客の動きを観察していた。深夜の来店客は繁華街でなければ常連客が大半を占める。深夜の仕事はそのお客様のニーズにあった陳列を行うのが前提だ。例えば22時に決まった銘柄のコーヒーを買う運転手、コロッケを買うサラリーマン、煙草を買いにレジに直行する人など。清宮も長く勤務するにあたって常連客の行動パターンは人一倍気を遣っていたが、今日に限ってはバックレた佐々木に対する不満が溜まっていたのか集中力を欠いていた。毎晩作って置いておかなければ追々困るコロッケを作り忘れていたのだ。22時頃は会社帰りのサラリーマンが弁当を買いに訪れる非常に忙しい時間でもある。清宮が鮮やかにお客様を千切っては投げ千切っては投げを繰り返しても減らないお客様、近付く不満げなサラリーマン。「ちょっと兄さん、コロッケないのこれで三日目。毎日買ってるんだからいい加減覚えろや。」穏和そうな人だと思っていたが店員に対しては口の聞き方が悪くなるタイプらしい。「すみません、只今お作りします」ぺこぺこと頭を下げフライヤーにコロッケを並べ一息、振り返るとレジにいつの間にか並んだ強面のジャージの中年。「すみませんお待たせいたしました!」小走りで接客に応じるとわざとらしい舌打ち。「お前、客をいくら待たせるんだ?ああ?」此方は揚げ足取りタイプ、待たせたとはいえコロッケをフライヤーに入れる30秒ほど、理不尽を感じながらも「申し訳ありません」と深々と頭を下げて謝罪、有難い小言を聞きながら出来上がったコロッケをサラリーマンに「大変お熱いのでお気を付けてお持ち帰りくださいと」頭を下げる。

まだ一時間、佐々木に小一時間グチグチ言ってやりたい衝動に駆られながらも万引きがないか目を光らせる清宮であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ