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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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第一級保管優先アイテム解禁

 『堀田商店』にて、アカリがその小さな体を精一杯伸ばしてはたきでパタパタと飾られたプレートメイルの掃除をしていると懐かしい声が店内に響く。

「帰ったぞ」

 そう言って姿を見せたのは一人のドワーフの老人である。

「お父ちゃーんおかえりーっ」

 (いかめ)しい髭面のドワーフの老人に、アカリは白いワンピースを翻して満面の笑みでボフッと飛びついた。

 その老人こそアカリの父にして『掘田商店』の主、堀田洞門(ほったどうもん)である。

「ふん。それは30近い女が父親を迎える態度ではなかろう」

 無愛想にそう返事をして背負っていた袋をゆっくりとテーブルに下ろす。

 傍目には孫と祖父ぐらいに見えるが、アカリはホビットなので女児のような外見とは裏腹に実年齢は結構いっている。

 おまけに実の子ではない養子なのだが、娘は父を世界中の誰よりも敬愛していた。

「お父ちゃん、1年ぶりに帰ってきた父親が可愛い娘にかける第一声がそれて……ウチも傷つくで。まあええわ、仕入れの方はどうなん?」

 すぐに商売人の顔になり、父にそう尋ねるアカリ。

「剣1万本、短刀3000本、メイス5000本、ランス5000本、杖5000本、弓1000本、矢1万本、ギター1000本、合計17万G。以上が今回の武器の納品書になる」

 そう言って父は娘に紙を手渡した。

「お父ちゃんアカン。弓職は前よりも人気ないんや。弓矢の仕入れが多すぎるわ」

「ふん。それをどうにかして売り捌くのがおまえの仕事だろう。迷宮の方はどうだ」

 堀田洞門はカウンターにどかっと腰を下ろすとパイプを吹かしながらそう尋ねる。

「ついにアングラデスの四層が攻略されたで。ボスは不死生物系の王ネクロスやったわ。それで、次の五層の調査に行った迷宮調査員がグレーターデーモンの群れにやられたみたいやね。まだそこまで潜れそうなのも実質3パーティぐらいやし、このままやと五層の攻略は厳しいんちゃうかなぁ?」

 アカリが小首を傾げてそう言うと、堀田洞門は静かに頷いた。

「ではそろそろ第一級保管優先アイテムから何点か武具を解禁してやっても良いな」

 そう言ってカウンターの奥にある厳重に鍵のかけられた倉庫へと進む堀田洞門。

 そこに所狭しと置かれた不可思議な形状の武器や防具の中からいくつかを選び、娘に店内に運び出させるとそれぞれ所定の棚に置いて『SOLD OUT』と書かれた札を次々と小気味良くひっくり返した。

 『セブントルソー 15万G』

 『グレートカネヒラ 15万G』

 『モノホシザオ 15万G』

 『ゴールデンサカタアックス 15万G』

 『ミナモトグレートボウ 5万G』

 『光の杖 5万G』

 『聖なるメイス 2万5000G』

 『卍手裏剣 2万5000G』

 『クシュナートの剣 2万G』

 『ベンケイグレイブ 2万G』

 『妖魔のハルバード 1万2500G』

 『聖女のランス 1万2500G』

 『邪眼の短刀 1万G』

 『ミスリルシールド 3万5000G』

 『ミスリルプレートメイル 5万G』

 『シルバープレート 2万5000G』

 『悪の鎧 2万5000G』

 『ダイミョウメイル 2万5000G』

 『ニュートラルプレート 1万2500G』

 『ビキニアーマー 1万2500G』

 『黄金のティアラ 5万G』

 『雪豹のストール 1万2500G』

「この『堀田商店』にこれだけの良品が並ぶのはワシの代ではもう最後だろう。さて、早い物勝ちだ」

 パイプを手に満足気に頷く父の背中で娘はそっと呟いた。

「さすがにコレ買える程の冒険者はこの街にはそうそうおらんと思うけどなぁ……」


 『アングラデスの迷宮』の入り口前で、都市防衛機構の兵士が沈んだ顔で時刻を確認した。

「時間だな。迷宮調査員の救出は失敗、二次遭難と見なして――」

 そう兵士が言いかけた時だった。

「ヘイ! 待ってもらおうか、時間には遅れないのがミーのモットーなんでね」

 木製の巨大なソリを引きずって、血塗れの赤毛の大男が迷宮から現れた。

「おお、救出屋のトシ殿! これはひどい怪我だ、一刻も早く教会へ!」

 帰還した大男を前に現場が急に慌ただしくなる。

「あれが救出屋のトシさんヨ。アタシたちも一緒に教会に行ってみましょう。五層の話を聞かせてもらわないとネ」

 アンナに促されて僕たちも教会へと向かった。


 関係ない僕たちが付いて行ったら何か言われるかなと思ったけど、意外にも誰にも何も言われなかった。

 もしかしたらだけど、あまりに僕たちの評判が悪すぎて誰も関わりたくないのかも……いやいや、それはないよな?

 トシは左肩を丸々えぐられる相当な重傷を負っていたが、教会の治療室で回復呪文による治療を受けて無事にその傷も癒やされた。

 うーん、やっぱり回復呪文ってすごいな。

 トシもよくそんな大怪我をして、遺体を載せたあの巨大なソリを引っ張り無事に帰って来たもんだ。

 というか、今トシの治療をしたこの美人すぎる黒髪の女僧侶に僕は見覚えがある。

 『イグナシオ・ワルツ』にいた女僧侶のヴェロニカだ。

「サンキュー、助かった。こんな美人のシスターに治してもらえるのなら怪我のしがいもあるというものだ」

 トシが爽やかな笑顔を向けるとヴェロニカも天使の様な微笑みを返す。

 うわ、この人もやっぱり相当なレベルの美人だよな。

 僕的にはヴェロニカ、ロンファ、サラ、エマの4人が現在甲乙つけがたい美女四天王とでも言うべき存在だ。

「わたくしはたまたま居合わせた臨時のスタッフですから。それにしても救出屋というのは人に誇れるとても立派なお仕事です。あなたが持ち帰ったご遺体の蘇生も全員無事に成功しました。これもひとえに神のご加護の賜物ですわ。それにひきかえ」

 そう言ってキッと僕たち、というか僕に眉間に皺を寄せて厳しい視線を向けるヴェロニカ。

「邪悪の体現者アキラ、わたくしはあなたを嫌悪します。どうしてわたくしの神への思いを綴ったインタビューがカットされてこのような唾棄すべき者が取り上げられるのでしょう。まったく信じられませんわ。同じ空間にいることさえも我慢なりません」

 美人すぎる女僧侶はモデルのようにくるっと背を向けると、ぷりぷりと治療室を出て行ってしまった。 

 ええっ、そこまで嫌われてるの僕!?

 しかも理由が例の『冒険者ルルブ』特別増刊号のインタビューがカットされたからとか……僕のせいじゃないのに。

 美人に嫌われるのって結構なショックだよな……テンションが下がるよ。

「ウフフ、教会のシスターに随分と嫌われているのねアキラは。でもかわりにワタクシがいましてよ?」

 赤いフードを被ったエルフの美女が僕の頭を撫でて慰めてくれたけど、その後ろでサラがまるで仁王のように腰に手を当ててこちらを見ている。

 助けを求めるように僕はアンナを見たけど、やれやれと言った様子で首をすくめるだけだった。

「おや? ユーたちは『ハイランダーズ』のアンナとヤンじゃないか。仲間のことは残念だったな。それに、そっちの國原館の袴を着た侍はセンセイが10年前弟子に取った二人組の一人だよな? 確か坂本豹馬と宮本六九四だったか。ユーは豹馬の方かな」

 救出屋のトシが仲間たちにそう話しかけてきた。

「お久しぶりトシさん。アタシたち今は『ハイランダーズ』じゃなくて『バタフライ・ナイツ』という名前のパーティにいるのヨ」

 そう説明するアンナの横で、ヒョウマが何やら考え込む。

「トシ……もしかして、わしらの兄弟子の土方刀志蔵(ひじかたとしぞう)先輩ですか!?」

 ヒョウマが驚いた顔でビシッと背筋を正す。

「そうか、センセイはまだその名前でミーを呼んでくれているのか。いつか顔を見せに行かねばとは思いながらもそのままズルズルと疎遠になっていたが。これを機会にまた國原館に顔を出してみるかな……いや、それよりもユーたちはミーに何か聞きたいことがあるんじゃないか?」

 僕たちはトシから五層での話をじっくりと聞かせてもらった。

 教えてもらったグレーターデーモンの冷気呪文と仲間を呼び続ける危険な行動パターンには特に注意が必要だろう。

 トシはそんなグレーターデーモン相手にも遅れを取ることはなかったそうだが、最後に現れた『白い悪魔』相手に長時間に及ぶ苦しい戦いを強いられたらしい。

 そいつの強さは他の悪魔とは桁違いのレベルで、トシも左肩をえぐり取られる深手を負わされたという。

「『白い悪魔』……ガイとマグアを殺ったアルビノデーモンに間違いないアルね。あの強さは三層で出る敵とは思えなかったが、まさか五層のモンスターとは驚きよ」

 ヤンが珍しく真剣な顔でそう語った。

「ミーも必殺の剣で粘ったが、ヤツの再生能力と増援のグレーターデーモンを前に泥仕合になってね。結局トドメを刺すどころか、最後は逃げるのがやっとだったぜ」

 僕が以前戦ったグレーターデーモンも自動再生能力というのを持っていて、切り落としたはずの羽がすぐに再生したり、切断した首も平然と喋ってたんだよな……。

 五層で待ち受ける激しい戦いの予感に僕の顔も強張る。

「さて、ミーはこれから都市防衛機構に報告を済ませて、愛するワイフとジュニアの元に帰るとしよう。葬式でも勝手に始められてはたまらないのでね。豹馬、受け取れ」

 そう言ってトシは弟弟子にあたるフェルパーの侍に何かを投げて寄越した。

「先輩、これは何ぜよ?」

「毒無効の護符だ。それがあれば悪魔の爪による神経毒は食らわない。だが油断して長くその手に触れるなよ、あいつらはエナジードレインもしてくるからな。それじゃグッドラック!」

 サムズアップで白い歯を見せて笑い、トシは去って行った。

「まっことありがたい物をもろうたきに。先輩、感謝するぜよ」

 ヒョウマはそれを大事に懐にしまい、トシの去った方に向かって頭を深く下げた。

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