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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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フランスから来た赤ずきん

 僕たちに声をかけたのはエルフの女性だった。

 華奢な体つきで知られるエルフにしては珍しく豊満なナイスバディ、それもかなりのレベルの美女である。

 茶色の大きな瞳に同じく茶色の前髪を揃えたボブカット、雪のように白い肌を真っ赤なフード付きローブで包んだ姿が印象的な女性だ。

 彼女を一言で形容するなら『アダルトな赤ずきんちゃん』といったところか。

「ボンソワール、『バタフライ・ナイツ』の皆さん。ワタクシは魔術師のエマよ。とある物を探してフランスからこの日本へと来たの」

 そう言ってエマは真っ赤なローブに包まれた豊かな胸の形を浮き出させて、膝を折ってセクシーにお辞儀をした。

「もしかしてそれがムラマサ? 残念だけど――」

 言い終わる前に、僕の唇にエマは細く柔らかな人差し指を押し当てて割り込むとセクシーに微笑む。

 わっ、超積極的だなこの人!

 その行動を見てサラがムッとする。

「ノンノン、ワタクシが探しているのはそれじゃないの。あなたたち、今までに『呪いのお菊人形』という物を見たか聞いた覚えはない?」

 唐突にグイグイと話を展開してくるエマ。

 だがこんな美人なら全然悪い気はしない。

 むしろ大歓迎である。

「トロイのおケツ人形? ヤンさんはノーマルだからそういうアブノーマルな物は知らないアルよ。フランスでは妙なプレイが流行っているね」

 うん、ヤンのことはとりあえず無視して放っておこう。

「昔聞いた古の怪談ネタでそういうのがあったような気がするけど。確か、髪が伸び続ける女の子の人形だよね?」

 僕がそう言うとエマは嬉しそうな顔で話に食い付く。

「ウィ! そうよそれだわ。どこにそれがあるのか知っていて?」

 エマは期待に満ちた目で僕にしがみつくと、その豊かな胸を密着させてくる。

 むにゅっ、という感触が僕の腕にダイレクトに伝わってきた。

 これは推定Dカップと見たぞ。

 大きさは『龍華八仙堂』のロンファ程ではないけど、色々な意味でかなり僕の中でのポイントは高い。

 ヤンが羨ましそうに丸眼鏡を光らせ凝視するのと対照的に、サラの表情は引きつっている。

「アラまぁ、アキラもハプニング上手だわネ」

 いつの間にか戻ってきたアンナが面白そうな顔で僕たちを見つめてそう言った。

 あまり今の状況を楽しむと後が怖いような気がするな……特にサラが。

「ざ、残念だけど所在までは知らないよ」

 僕は断腸の思いで、エマを自らの体からそっと引き離した。

「そうなの……とても残念」

 落ち込んだ様子でなよなよとその場にへたり込むエマ。

 どうやらずいぶんと感情表現が激しい人みたいだ。

「ところで、現在あなたたちのパーティに空きはあるのかしら?」

 真っ赤なフードを脱ぎ、彼女は上目遣いで突然そう切り出した。

 美人だなあ……いやそうじゃなくて、これって……僕たちのパーティに入りたいってことかな?

 僕が質問に答えるより先に、サラがすごい勢いで即答する。

「フルパーティにはちょうど一人空きはあるけど、私たちのパーティは今ここにいない中立の侍を除いて、みーんな悪なのよねーっ!」

 ちょっと意地悪そうにエマにそう答えた。

 こんなサラを見るのは珍しい気がするな。

「トレビアン! ワタクシも属性は悪なの。同じ属性の女性同士、仲良くできそうね!」

 エマはパッと顔を輝かせてサラの手を取り、そのままハグした。

 サラは突然のこの行動にポカンとした顔をしている。

 彼女も悪だなんて、冒険者の属性だけは本当に分からないものだ。

「それでムッシュアキラ? ワタクシを仲間にして頂けるのかどうか、教えてくださる?」

 魅力的な茶色の大きな瞳を切なげに潤ませて、エルフの美女が僕に迫る。

「ヤンさん的にはナイスバディな美女の参入はいつでも熱烈大歓迎よ。それに魔術師の攻撃呪文はかなり強いね。アキラ、どうするアルか?」

 鼻息を荒くさせたヤンが両手をわしわしと動かす謎の挙動を見せながら僕に問う。

 丸眼鏡の奥から断ったら許さないというオーラをバリバリに出してプレッシャーをかけてくるので、ひとまず仲間にパスすることにした。

「僕としては願ってもない申し出だと思うけど。アンナとサラはどうかな?」

「『ハイランダーズ』時代も後衛からノウィスとアルビアの攻撃呪文で敵を仕留めるのが必勝パターンだったものネ。ま、アタシはリーダーのアキラの意見に従うだけヨ。ヒョウマもきっと同じだと思うわ」

 そう答えるアンナにサラはとても不満そうな顔を一瞬見せたが、眉尻を下げて渋々と頷く。

「じゃあ決まりだ。僕らのパーティ『バタフライ・ナイツ』にようこそ、エマ」

 僕がエマに向かって手を差し出すと、彼女はそれを両手で包んだ。

「ウフフ。それじゃよろしくお願いするわね。幸運なあなたたちと一緒にいれば、ワタクシの探し物もきっと見つかるような気がするの」

 エマが微笑みを浮かべ僕らに見せた冒険者登録証には『レベル15・悪・魔術師・エマ』と書かれていた。

 こうして僕たち『バタフライ・ナイツ』に、フルパーティとなる6人目の仲間が加わったのだ。


 <うるわしの酔夢亭>でエマのパーティ加入祝いを兼ねて5人がしばらく飲んでいると、ヤンに向かってエマは耳元でこう切り出した。

「ヤン、ちょっと他のみんなにはナイショのお話があるの。どこか二人だけになれる場所はないかしら?」

「ウシャシャシャ、ヤンさんにもモテ期到来ね。こりゃギャンブル行ってる場合じゃないアルよ。ちょうどいい場所があるからそこへ行くよエマ」

 ヤンはそう言って仲間たちに用事ができたと別れを告げると、手を繋いでルンルン気分で<トーキョーイン>の自分の部屋にまんまとエルフの美女を連れ込んだ。

 暗い室内に入ったエマは潤んだ瞳でヤンの手を取ると懇願する。

「シルブプレ、ヤン。ちょっと恥ずかしいお願いがあるの……そのローブを脱いでくださるかしら?」

 積極的なそのアプローチにゴクリとヤンは唾を飲み込む。

「フランスの女子は大胆アルね……そっちがその気ならもうローブと言わずにヤンさん一気に全部脱いでもいいね。善は急げと言うよ」

「ノン、ローブだけでよくってよ」

 エマはヤンの脱いだ変な動物の描かれた古ぼけたローブを手に取り、じっくりと調べた。

「……やっぱり本物だわ。あなたの身に付けていたこのローブ、『ヒキュウローブ』よね。まだ世界に一着しか確認されていない、あらゆる物理攻撃のダメージを90%カットする隠し効果を持つ伝説のローブ。とても珍しいレアアイテムのはずなんだけど、これを一体どこで手に入れたのかしら。ワタクシに教えてくださる?」

 そのローブに描かれていた動物は、中国に伝わる伝説の神獣『貔貅(ひきゅう)』、金を食べる財運の守り神である。

 エマはその大きな茶色の瞳でヤンをじっと見つめた。

「これはヤンさんが昔、上海の『玉華八仙堂』のユーファからギャンブルで大勝ちしたカタとして手に入れたよ。真っ当なルートでゲットした物ね。決して盗品ではないアルよ」

 せっかくのチャンスに窃盗罪の疑いでもかけられて台無しになったのではたまらないと思い、ヤンは慌てて説明する。

「ユーファ? グワナという名の老人ではなくて?」

「違うね。ユーファはアラフォーの女よ。その名前にはヤンさん聞き覚えないアルね」

 ヤンの言葉を聞いてエマはバタンとベッドに倒れ込んだ。

「あふぅっ……老師の手がかりを掴んだと思ったのに……ワタクシ、実は昨日から寝てませんの。もう限界でしてよ……ボンニュイ」

 エマは切なげな声を出して、そのままベッドの上でスースーと寝息を立て始めた。

「おい、起きるねエマ。二人の夜はこれからよ」

 ヤンは慌ててゆさゆさとエマの体を揺さぶるが、真っ赤なローブ越しに形の良い胸がぷるぷると揺れるだけで彼女が起きる気配はない。

「エマお願いよ、せめてコトが終わるまでは……ああ、せっかく久々のお楽しみと思ったのにどうしてこうなるね? ヤンさん男の道に反して寝込みを襲ったりはしないアルね。まったく、自分の紳士っぷりがうらめしいよ」

 ヤンはローブを脱がされてパンツ一丁のまま、眠れるエルフの美女を前にため息をついた。

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