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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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アングラデスの迷宮第三層 True その3

 パチパチパチパチ。

 手下たちに守られた芸術王が僕たちに突然拍手を送ってきた。

 自分の息子たちがやられたというのに、この落ち着きようは何だ?

 何か猛烈に嫌な予感がするぞ。

「合格ですよ皆さん。さすがこのオーク四天王最高の頭脳を誇る、芸術王オルイゼの前に現れるだけのことはありますねぇ。しかし、少々不愉快ですよ。特にそこのあなた」

 そう言って芸術王は僕を指差した。

「えっ、僕?」

「オークロードのカーくんがせっかくお得意の僧侶呪文を詠唱しているというのに、その最中に攻撃をするとは。一体今までどんな教育を受けてきたんですかねぇ。親の顔が見てみたいとは、まさにこのことですよ」

 くそっ、親の顔なんて僕だって見たことないよ。

 『恵みの家ハートハウス』に生後すぐに天涯孤独のみなし子として預けられ、葉山旭という名前もそこでお世話をしているマザーが付けたんだって聞いた。

 でも、よりによってオーク四天王に説教された冒険者なんて僕ぐらいなもんだろうな……いやいや、そんなのはどうでもいい。

「また変なのを召喚でもされる前にやっちまおうぜよ、アキラ!」

 確かにヒョウマの言う通り、コボルドキングに神を召喚された時の二の舞を演じる訳にはいかない。

 僕はヒョウマに目配せをして一気にオルイゼの下に詰め寄る。

 その時、大きな何かが飛んできて慌てて僕たちは飛びのいた。

 ドガン!

「危なっ! なんだ今のは?」

 目の前でもくもくと砂煙を上げているそれは、ダンジョンの石壁の一部であった。

 遠くからズシンズシンと大きな足音を立ててそれは姿を現す。

「ぱぱ、おで、きたどー」

 うおおおおっ、なんだコイツは!?

 それは身の丈5メートル以上はあろうかという超巨大な化け物であった。

 しかも素っ裸だ!

「ヤダ! もうっ」

 サラがそれを見るなり可愛い声を出して恥ずかしがったけど、両の目は真っ直ぐに注がれ視線は逸らさない。

「紹介しましょう。私の最高傑作である愛息子、オークジャイアントのノブくんですよ。ノブくんの母体として使ったのはジャイアント族のクイーンでしてね」

 ズシンズシンと足音を響かせてそいつはゆっくりと歩いてくる。

 その近くにいたヤンが、手にしたパワースティックで巨人の脛目がけて不意打ちをかますも完全なノーダメージで、慌てて全力疾走で僕らの方に駆け寄ってきた。

「ハァハァ、あれはヤンさんの手には余る相手よ。あと10年若ければヒィヒィ泣かせてやったのに、もう歳ね。後は若い人に任せるアルよ」

 そう言って手に傷を負ったヒョウマに回復呪文を唱えると、ヤンは石壁の破片を椅子代わりにして座り込む。

 うーん、活躍してるんだかしてないんだか……よく分からないなヤンは。

「ノブくんはジャイアントの巨体と、芸術王と呼ばれた私の頭脳を兼ね備えた史上最強のオークです。ノブくん、彼らと遊んでおあげなさい」

 芸術王の命令にノブくんは嬉しそうな顔をする。

「ぱぱ、おで、あのおんなのご、およめさんにほしいどー」

 ご指名されたサラは、ノブくんのとてつもなく大きい下半身を見たままぶるっと体を震わせた。

「じゃあサラがおよめさんにされちゃう前に、頑張ってあのデカイのを倒すとしますか」

 僕は颯爽と巨人の前に距離を詰めた。

 あの技がある僕は無敵だからね。

 そこで重大なことにようやく気が付く。

「うわ、コイツの首や心臓まで剣がまるで届かないや……」

 そう、<操手狩必刀(くりてかるひっとう)>で弱点を狙うにはあまりにノブくんは大きすぎたのだ。

「ほいたら、わしと一緒に足を狙うて見るがよ」

 ヒョウマが僕と挟み撃ちするような位置に動いた。

 そうか、ギリシャ神話のアキレスの踵や弁慶の泣き所のように、その巨体を支える足さえ封じてしまえば倒せるかもしれない!

 そう考えた瞬間、ノブくんはその巨大な足で僕にスタンプをかましてきた。

「ふみつぶすどー」

 ドシーン!

 その一撃は辺りを震動させて、硬い石でできた床もへこます程の恐るべき破壊力だ。

 今のは躱せたけど、もし油断してあの足で踏まれでもしたら、一発であの世行きだぞ……。

「サラ、少しの間ノブくんの気を引いてちょうだい。その隙にアキラとヒョウマは足を狙って。アタシはアイツの首を狙ってみるわ」

「わかったわ! コホン……ノブくぅーん、こっちにいらっしゃ~い!」

 アンナに指示されたサラがスカートから太ももをチラチラさせて猫なで声でノブくんを呼ぶと、そちらの方にまるで母親を見付けた赤ん坊みたいに巨人は大喜びでズンズン歩き出した。

「今だ! <操手狩必刀(くりてかるひっとう)>」

「奥義<一ノ太刀>ッ!」

 僕とヒョウマの声が重なり、左右から巨人の足目がけて全力の刀を振り下ろす。

 そしてアンナも壁を利用して巨人の背中を三角蹴りで駆け上がり、その首元にスライサーの刃を滑らせた。

 ズルッ。

 ゴムの表面のような弾力ある皮膚が僕たち3人全ての攻撃を弾いた。

「嘘だろっ?」

 驚きの顔で僕が叫ぶと、ノブくんは首元にいたアンナをその手で蚊でも叩くように素早くバチンとはたき落とす。

「ノロマだと思ってたけど意外とリーチもあって素早いわネ」

 アンナは間一髪で直撃は免れたみたいだけど、その顔にいつもの余裕は見えず真剣そのものだ。

 ノブくんは僕たちを見下ろし無邪気にガッツポーズをして笑う。

「おで、ぜんぜんいだぐないもんねー」

 ジャイアントという連中の皮膚は極めて分厚く、斧ですらその肉を切るのは容易ではないというのを『冒険者名言集』でそういえば見た記憶がある。

 それにしたって、ここまでとは信じられない。

 芸術王の頭脳を備えているかは甚だ疑問だが、体の強靭さはジャイアントそのもの、いやもしかしたらそれ以上かも。

「どこか弱点がないか……眼球とか口の中ならきっといけそうだけど、あの高さと腕の反撃を攻略するには……」

 僕が必死に頭をフル回転させて策を練っていると、サラがノブくんの下にツカツカと歩み寄った。

「サラ!?」

「男の人の弱点ってココよね」

 サラはハルバードの鉤爪をノブくんの大きなアソコに引っかけると、ぐるりと持ち手を回転させてなんとそれをねじ切った!

 確かに骨がなく血管の集まったそこは、いかなジャイアントといえども他の部分より格段に繊細で柔らかいはずだ。

 ノブくんの何もなくなった股間からおびただしい量の血が、ダンジョンの床へシャワーのように流れ落ちる。

「いだあああーいぃ!! ぱぱ、いたいどおおー!」

 うわあああ、見ているだけで同じ男としてはもう痛すぎる!

 大の巨人がその場にうずくまって股間を押さえて泣き喚く。

「アキラにヒョウマ、今がチャンスね。眼球か耳の穴から刀を突っ込んで脳ミソをぐりぐりするアルよ!」

 ヤンがさらに痛そうな攻撃方法を指示してきた。

 僕とヒョウマは速やかにそれに従い、ノブくんの目と耳に刀を突き立ててぐりぐりする。

「だあっ……」

 芸術王の頭脳を備えたらしいノブくんの脳内は僕たちの刀でズタズタに切り裂かれ、驚異の巨人はようやくその生命活動を終えた。

「くっ役立たずのバカ息子め」

 忌々しそうに芸術王がそう吐き捨てると、オークの手下たちはノブくんが倒れたのを見て芸術王を放置して一斉にどこかへと逃げ出す。

「観念しろオルイゼ!」

 僕がムラサマを突き付けて叫ぶと芸術王はため息をひとつつき、その白衣を脱ぎ捨てる。

「オークという種族が、一般的に粗野で好色なとても知性とはかけ離れたイメージなのはご存知でしょう。私はそれを払拭するために芸術にその全てを捧げ、今まで実験によって優れた個体を作り上げることに心血を注いできたのです。だからこそ、『暴力』などという野蛮なものに頼るのはやめていたんですけどねぇ」

 すると芸術王の全身がムキムキと肥大していく。

 オークジャイアントは純粋にでかいだけだったが、こいつは僕たちとさほど変わらないサイズにも関わらず、その筋肉はとんでもない質量だ!

「愚か者どもめ。オーク四天王でも最強の肉体を誇るこのオルイゼに本気を出させるとは……お遊びはここまでだ。どこからでもかかって来い、小童ども」

 そう言って手のひらを上に向けるとクイクイと指を動かして僕たちを挑発した。

 コイツは壮絶にヤバそうだぞ……。

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