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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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運命の岐路

 各パーティの代表者によるダイス勝負の結果、『イグナシオ・ワルツ』が最初にエレベーターを使用することに決まった。

「やはり神は日頃の行いを見ておられるようだ。それでは我々は先に失礼させてもらおう」

「私、イタリアになんて帰らないから!」

 ジェラルドはサラの言葉を聞こえていないかのように完全に無視して、仲間たちとエレベーターに乗り込んだ。

 エレベーターの脇にあったランプを見ると『イグナシオ・ワルツ』はどうやら四層へと無事に降りたようである。

 しばらく経って再びエレベーターが上がって来ると、今度はチヒロたちが乗り込む。

「感謝するぜアキラ。おかげで長い間止まっていたこの迷宮の探索を再開できるんだからな。今度また<バタフライナイト>で一緒に飲もうぜ」

「ばいばいピューマ。もうムックとケンカしちゃだめだよぉ!」

 最後にチヒロが指を2本立てて僕に向かってクールに振り、ヤヨイは子供のように笑顔でブンブン手を振った。

 彼ら『イノセント・ダーツ』も四層へと降りたようである。

 広間には僕たち『バタフライ・ナイツ』だけが残された。

「ネオトーキョーの攻略上位パーティで『ハイランダーズ』は3位どまりだったけど、『イノセント・ダーツ』はずっと1位だったのヨ。『イグナシオ・ワルツ』ではなく、彼らがここを先に攻略しちゃうかもネ」

 アンナの説明に僕はもう驚かず納得した。

 目の前の僕でも受けるのが間に合わなかったジェラルドの剣を、あの距離から一瞬で間合いに入り受け止めただけでなく、逆に二刀流の短剣を喉元に突きつけ追い詰めるという神業を披露したレベル19の盗賊チヒロ。

 その技量はとても尋常なものではない。

 アンナの素早い身のこなしも僕にとっては相当な驚きであったが、チヒロのそれは更に上を行っている。

 そしてヒョウマの奥義をも軽々と受け止めた伝説級武器、デュランダルを持つレベル17の戦士クロト。

 あの鋼のような筋肉といい、戦士である僕が目指すべきお手本のようなタフな男だ。

 というか正直に言うと僕も彼のような伝説級武器が欲しい。

 今のムラサマはムラサマで使いやすくて気に入ってるんだけど、さっきのジェラルドに『ナントカフィナーレ』で<操手狩必刀(くりてかるひっとう)>を防がれた時、とても嫌な音と感触がした。

 恐らくあれをもう何度か続けていたら刀が折れてしまっていたはずだ。

 不滅の剣デュランダルなら無茶な使い方しても絶対に折れないんだろうな。

「わしは恐らくアキラにも勝てず、ジェラルドにも勝てず、ムクシにも勝てず、チヒロにも勝てず、クロトにも勝てんぜよ。修行が全く足らん未熟者ちや」

 悔しいのか、ヒョウマがそう言って手甲をがちんと打ち鳴らす。

「そんな、僕よりよっぽどヒョウマの方が強いって。それにあのジェラルドだけでなく、みんながみんな本当に強かったからね」

 僕がそうフォローするとヒョウマは牙を見せて笑った。

「じゃがの、アキラよ。わしゃ嬉しいんぜよ。こんなにも超えるべき目標がおるっちゅうのがよ。今のわしよりもまだまだ強くなれるってことじゃき」

 そういう考え方か……ヒョウマって強い相手に出会ってやる気を出す、向上心のある男なんだ。

 僕も少しは見習わないといけないな。

「そういえばサラ、君の兄さんの『ナントカフィナーレ』って技は何なの?」

 僕に聞かれたサラはキョトンとした顔をする。

「もしかして<ペリ・ソーレ・フィナーレ・マーレ>? 兄さんが小さい頃にイグナシオ神の声を聞いて授かった神技、秘密の奥の手よ。でもどうしてアキラが知っているの? 私が気絶している間に兄さんが話したのかしら」

「僕の必殺技がその技で防がれたんだよ」

 するとサラがあっけらかんと笑った。

「そんなはずはないわ。あれを出されたら今こうしてアキラが生きているはずがないもの。兄さんがあの技を出したら敵は死ぬ。そういう技なのよ」

 どういう技だよ!

 でも、考えようによってはそんな無敵の必殺技を僕も防いだということになる……のかな?

 そうだ、ヒョウマじゃないけどなんだか強い相手のおかげで僕も自信が漲ってきたぞ、うん。

「あ、もうひとつ思い出した。ヤンの回復呪文って普通の僧侶呪文にはない凄い呪文なの? あのモデルみたいな凄く美人の僧侶も驚いてたよね」

 僕がそう言うとサラが途端に眉間に皺を寄せ頬を膨らませてムッとした表情になった。

 右手にハルバードを持ち、左手を腰に当てたその姿はまるで戦の女神のような迫力がある。

 まずい、他の女性を軽々しく褒めちゃダメみたいだ。

 今後は十分気を付けようと内心で密かに反省する僕に、ヤンが丸眼鏡を光らせた。

「アキラよ、男には謎があるもの……それはミステリーね。そして他パーティの女子に鼻の下を伸ばすのも良くないアルね。それはヒステリーを生むね」

 はぐらかされた上に手痛い責められ方をしたんだけど。

 くそー、覚えてろよ。

「それじゃアタシたちもいつまでもくっちゃべってないで、四層に向かいましょうヨ」

 アンナはそう言ったが、僕にはひとつ気になる点があった。

「そういや、このエレベーターは三層で降りたらどこに出るんだろう? 普通に階段で降りて行けないエリアなのは間違いないよね」

 この僕の単なる思いつきは、世界に影響を及ぼすとある重大な事件へと後に繋がるのである。

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