太陽による悪の終曲
「サラっ!?」
ジェラルドと激しい撃ち合いをしている最中、モンクの拳によって倒されたサラに思わず気を取られて僕が叫ぶ。
「まずは一人。仲間たちが全員倒されるその時まで、おまえは果たして私の目の前に立っていられるかな?」
栗色の髪の美青年が剣を縦に構えて僕を挑発する。
こいつ、自分の妹があんな目に遭ったというのに何も感じていないのか!?
僕の心の中に激しい怒りの炎が燃え上がった。
そっちがその気ならこっちにだって考えがある。
対人戦なんかでは出すべきでないと思っていた"あの技"を使わざるを得ない。
こうなればリーダーであるこいつを教会送りで、一気にこの戦いを終わらせてやる。
僕は無心のままに、目を瞑るとその技の名前を口にした。
「<操手狩必刀>」
鋭い必殺の一撃が目の前のジェラルドに――。
「<ペリ・ソーレ・フィナーレ・マーレ>」
ギャリィィィッ!!
嫌な金属音が響き、僕のムラサマとジェラルドの剣が互いに激突し盛大に火花を散らす。
その反動で僕は激しく後ろに弾かれ、危うくムラサマを手から落とすところだった。
信じられない……グレーターデーモンすら一撃で倒した僕の必殺の技を、こいつは今受け止めたぞ!?
しかも僕と同じく何やら技名らしきものも口にしていた。
額に汗を滲ませる僕にジェラルドが宣言する。
「私は聖イグナシオ神の忠実な使徒。いつだって崇高なる善のマインドの下、正々堂々と戦っている。おまえのような悪の剣ごときに負けるつもりは一切ない!」
何を言っているのかさっぱり理解できないけど、こいつは相当やばい感じだ。
ムクシと戦っていたヒョウマも今のジェラルドの一撃を見て驚きのあまりその目を見開く。
「信じられんちや……ムクシよ、おまえらの主は何者かよ? さっきのアキラの電光石火の技を受け止めるのはわしでも無理ぜよ」
「むふふ、仕えるべき主を間違えましたなヒョウマ殿。それよりも、人の心配より自分の心配をするでありまーす」
ムクシはそう言うと間延びした軽い口調とは裏腹に全身の毛を逆立て、とてつもない殺気を放つ。
「國原一刀流、宮本六九四が秘奥義<朽ち縄>でーす」
ムクシの太い縄状の毛がまるで大蛇のようにうねり無数に伸びると一斉にヒョウマの体に絡みつき、しなやかな侍の体を締め付けてその動きを封じる。
「ぐおっ、体が動かん……おまん、いつの間にそげな大技を!?」
「むふふ、ヒョウマ殿はちょこまか鬱陶しいですからな。先手で一気に決めてしまうに限るのでーす。これで煮るのも焼くのもワガハイの自由ですぞ」
その時、敵の後ろの方からアンナが叫んだ。
「ハイハイ、そこまでにしなさいアンタたち。もうバカげたゲームはおしまいヨ。これ以上続けるなら可哀想だけど、このキレイな子の喉を切り裂くわ」
いつの間にかアンナは敵の最後方にいた美人すぎる女僧侶ヴェロニカの背後に回り、あの痛そうなスライサーの刃を美女の喉元に突きつけている。
やったぞアンナ、これで完全に形成は逆転だ!
「どうぞご自由に。わたくしたちは死ぬことなど何も恐れていませんわ。唯一恐れるのはそう、善なる神への信仰が悪の力に負けること。それにわたくしが死んでもジェラルドもマナもトニーノも僧侶呪文を使えましてよ。人質に取る相手を誤りましたわね盗賊さん」
黒髪の女僧侶は冷静にそう言うとにっこりと微笑み、逆にアンナにプレッシャーを与えた。
「アタシもミスったわ。まさかこんなにまで信仰にいかれちゃってるなんてネ。これだから善属性の子って嫌いなのヨ」
アンナがため息を漏らすとジェラルドの怒声が響く。
「おお、神よ。こちらもあえて僧侶は見逃したというのに、よくも敬虔なシスターであるヴェロニカに刃物を突きつけるなどという罰当たりな真似を。ムック! もう手加減は無用だ。本気でかかるぞ!」
「ジェラルド殿の許可が下りたのでこれでおさらばですぞ、ヒョウマ殿。奥義<一ノ太刀>、いざ参るのでーす」
象牙色の毛に覆われたその奥で、ムクシの瞳が怪しく光った。
ズバシュッ!
ムクシの一撃が身動きできないヒョウマの胸を容赦なく横一文字に切り裂くと、噴水のようにそこから血が溢れ出る。
体に食らいついていたムクシの毛ごと切り裂かれたヒョウマは、自ら作った血の海に突っ伏す。
「一度このコンボをやると丸一ヶ月は毛が伸びなくて困るのでーす。ですがその価値は十分でしたぞ、ヒョウマ殿」
ムクシは一礼するとマンプクマルを納刀した。




