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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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イノセント・ダーツ

「おや、新しいお友達かい? ニーニ、ミーミ」

 <うるわしの酔夢亭>で談笑していたヤヨイたちの前に現れた爽やかな雰囲気の男が、フェアリーの二人にそう呼びかけた。

「そうなのー」

「ヤヨイっていうのよ」

 ミーミとニーニがその男にヤヨイを紹介する。

「はじめましてヤヨイ。俺の名はチヒロ。カノン姉妹と同じパーティ『イノセント・ダーツ』のリーダーをやってる、しがない盗賊さ」

 そう言って愛嬌たっぷりにウィンクするチヒロ。

 感じの良さそうな男の人だなと第一印象でヤヨイはそう判断した。

「はじめまして! ヤヨイですぅ。二人と同じパーティなんですか?」

 ヤヨイが元気よく答えると、チヒロは隣の席に座り酒を注文した。

「そうなんだ、何の因果かウチのパーティは全員が中立属性で構成されてるんだ。おまけにメンバーはたったの4人。珍しいだろう?」

「ええーっ、そうなんですか? すごぉーい」

 目をまん丸にし口に手を当ててヤヨイが素直に驚く。

 中立という属性は善悪どちらの属性ともパーティを組める。

 だが中立では僧侶、ビショップ、ロード、忍者にはなれないため、基本的には善か悪のどちらかのパーティに混ざるのが定石だ。

 人数が少ないとはいえ、全員が中立というチヒロのパーティは珍しいレアケースといえる。

「だからなのかどうか知らないが、パーティ全員が気心の知れた友人、いや家族みたいなものかな。ウチはそんな居心地のいいアットホームなパーティなのさ」

 チヒロが照れくさそうにパーティ自慢をするが、嫌味な感じはしない。

「へぇー! いいなぁ。わたしもそういうステキなパーティに入りたいよぉ」

 ヤヨイは思わず本音を漏らし、ムクシやヒョウマと会えずに一人っきりになった事実を思い出して泣きそうになる。

「そう言ってもらえると俺たちも嬉しいよ。おや?」

 チヒロはヤヨイが小さな子供のように首からぶら下げている冒険者登録証に目を向けた。

「その冒険者登録証を見たところヤヨイも俺たちと同じ中立、それも中級職のレンジャーなんだな。どうかな、ヤヨイさえ良ければウチのパーティに入らないか?」

 ヤヨイがそれに答えるよりも早くフェアリーたちが大騒ぎを始めた。

「ミーミは大賛成なのー! だってヤヨイもミーミと同じでイケメンが好きなのー。ねーヤヨイ?」

「ニーニだって大賛成なんだから。ヤヨイにはこれからたっぷりと筋肉美についてレクチャーしてあげないとね!」

 そう言われてヤヨイは思わず胸の奥が熱くなった。

「カノン姉妹もこう言っているし、どうだい?」

 チヒロがそう聞くとヤヨイはまるで子供のように右手を上げて元気よく答える。

「わたし、入りますぅ!」

 こうしてヤヨイは中立のパーティ『イノセント・ダーツ』の新メンバーとして加わった。


 しばらくして、遅れて現れたもう一人のパーティメンバーをヤヨイはチヒロから紹介された。

「紹介しようヤヨイ。彼がリズマンの戦士クロト。ウチの鉄壁の守護神さ」

 リズマンという種族は爬虫類から進化したとても頑健な種族である。

 彼らはこの世界に現れてまだ間もない。

 元々は南米ペルーの『クルルナンダの迷宮』で『魔王キラ・コアトル』の尖兵として異世界より冒険者と戦わせるために召喚されたリザードマンという種族だったが、彼らはその任務を放棄し、迷宮を出て湿地の奥で平和に暮らし始めた。

 今から22年前に迷宮調査員ダイヤ&ハートがコンタクトに成功し、新たな異種族の仲間『リズマン』として国連に正式に認められ受け入れられた。

 リズマンは全種族でトップクラスの力と生命力を誇る、前衛職に一番適した超戦闘民族だ。

 反面、知恵や信仰心は極度に低い。

 これは彼らの生活が実にシンプルかつ過酷なサバイバル環境だったのに由来する。

 しかも彼らは考える前に動くことができるというとんでもない反射神経を持ち、そのため頭を使う必要がなくなったといわれている。

 他種族と積極的に関わろうとしないリズマンは、冒険者の中でもその種族割合は低い。

「クロト、だ」

 全身ぬめりのある鱗に覆われた鋼のような筋肉を持つリズマンの男は、それだけポツリと口にした。

 爬虫類独特の目が怖い。

「あっ、えっとぉ、レンジャーのヤヨイですぅ。宜しくお願いしますぅ」

 ヤヨイはペコリと頭を下げて恐る恐るその体に触った。

 ふさふさではないが不快感は特に感じない。

 いきなり触られたクロトは不思議そうにチロリと蛇のような舌を出した。

「うふ、イイ男よねクロトって」

 ニーニがうっとりとクロトの肉体を眺めてヤヨイに同意を求める。

「そうとも。まったく、男の俺から見ても惚れ惚れするぐらいのいい男だぜ……」

 ヤヨイが答えるより先に、チヒロがうっとりとした目でクロトを見てそう言うとため息をついた。

「あのね、チヒロは男の人が好きなのー」

 ミーミがヤヨイにそっと耳打ちする。

「えー!?」

 なんだか色々と退屈しなさそうなパーティだと思い、ヤヨイは眼鏡の位置を直した。

「さてと、それじゃヤヨイの『イノセント・ダーツ』加入歓迎会を兼ねて、俺のとっておきの穴場『ルナガンドの迷宮』で軽くレベリングしておこうか」

「行く、か」

 チヒロの言葉に、クロトはテーブルに立てかけていた黄金の柄頭が眩しい大きな剣を背負った。

「ミーミはあそこ好きなのー。チヒロ以外誰もあそこを知らないのー」

 ふわふわと浮かびながら宙返りをして喜ぶミーミに、姉のニーニが両手を腰に当て目の前をホバリングして挑戦的な笑みを妹とヤヨイに向ける。

「それでも一日どころか一週間かけてもアレが出るとは限らないけどね! ヤヨイがどの程度の幸運の持ち主か、見せてもらうわよ」


 『ルナガンドの迷宮』でヤヨイたちはたった2時間のうちに強欲な男が高名な魔術師に作らせたという希少種プラチナガーゴイルに遭遇、討伐に成功する。

 おまけに"迷宮王の贈り物"を発見し、希少なアイテム『月桂樹の冠』まで手に入れた。

 こうしてヤヨイはレベル1から一気にレベル9へとありえない速度でのレベルアップを成し遂げたのだった。

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