大金の行方
カランコロンと心地良い鈴の音のするドアを開けて、僕は『龍華八仙堂』へと入る。
「いらっしゃいませよー。あらアキラさん今日は一人ねー。それはいいことですよー。ヤンと一緒に行動してるときっとそのうち悪い遊び教わるよー」
黒のチャイナドレスの胸元からそのたわわに実った巨乳をぽよんとさせてロンファが微笑む。
相変わらず凄い迫力だよ、ホント。
「こんにちはロンファさん。今日はこれを買い取って欲しいんですけど」
そう言って僕はヤンから預かった鋭く長い牙を背中の袋から取り出し、巨乳の美人店主に手渡す。
それを見るなりロンファは目の色を変えた。
「こ、こ、これは! 『犬王美若膏』の材料だよー。日本で持ち込まれるのは初めてですよー。おまけにキレイに根本から取れてるねー。これは少しでも欠けると等級がぐぐっと落ちるですよー。アキラさんは素材採集の天才よー」
「いやー、大したことないですよそんな」
ホントは僕の手柄ではないんだけど、とにかくホメて伸ばされたいタイプの男、それが僕である。
人からの賞賛はそれがたとえ他人の手柄でも素直に受けておこう、うん。
「それじゃ重量を測りますですよー」
待ってましたよ、この時間を。
ロンファが秤に乗せようとして動くと、今にも胸元から大事なものがこぼれ落ちそうになる。
目の前で繰り広げられるダイナミックなその光景に僕は心の中で喝采を上げた。
「はいーそれでは10000Gで買い取るよー」
「スゴっ! そんなにするんだコレ!?」
大金をあっという間にゲットした僕は、これが本当の冒険者ライフってやつなのかと思い興奮が収まらなかった。
数十Gぽっちでちまちま悩んでたのがまるで遠い古の出来事のようだ。
「『犬王美若膏』は美容に悩む世界中の女性に需要があるよー。なのに肝心のコボルドキングはとても数が少なく、なかなか素材取れないですよー」
なるほど、確かにキングって言うぐらいだしそこらにホイホイいないよね。
「そういえばこの間当たった『かがやきのたて』だけど、あれすっごく役に立ったよ。街に出たトリプルGって知ってる? あれ倒すのに使ったんだ」
その言葉にロンファは顔をぱあっと明るくして、目をキラキラさせて僕を見つめる。
「アイヤー、アキラさんがあれ倒したかー。ロンファのお店の景品が役立って嬉しいよー。アキラさんは素材も集められるし腕も立つですねー。ロンファもアキラさんみたいな人とお付き合いしたいよー」
そう言って巨乳の美人店主が僕の手にさわさわと優しく触れる。
ふふふ、悪くない気分だ。
思わず僕の鼻の下も伸びる。
「そんな優秀なアキラさんにロンファからとてもおすすめの商品あるですよー」
夢見心地で『龍華八仙堂』を出た僕の手には『一角皇帝究醒液』というよく分からない商品があった。
値札には5000Gと書かれている。
あと、期限が明日までの歌舞伎のタダ券が一枚。
あれ?
もしかしてこれって、いわゆるボッタクられたってやつでは?
でも何だかとっても柔らかくて気持ちのいい思いをしたような気も……。
いやいや、それとこれとは別、どう考えてもいらないでしょ『一角皇帝究醒液』は!
浮かれてこんな物に大金を注ぎ込んだことを僕は早くも後悔し始めていた。




