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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
41/214

外伝 世界三大冒険者コジロー秘話 後編

「ウィザードヴィジョンの全世界同時生中継? 珍しいな。一体何が始まるんだ」

 街頭や施設に設置された大型のパネルに突如映しだされた生中継の模様に人々はざわめいた。


 ウィザードヴィジョンとは、念導体システムを利用した遠くの物を映し出す力、要するにテレビのようなものである。

 この世界ではかつて、ワシントンを手中に収め『デビルシティ』を築きあげた『魔王イブリース』のもたらした災厄により、世界中のありとあらゆる機械は動かなくなった。

 マスコミや野次馬がテレビやインターネットで面白おかしく実況中継していたのにキレたのだ。

 その結果、飛行機は墜落し、自動車は動かなくなり、交通及び通信網は麻痺して世界中の都市はその機能を止めた。

 モンスターという人類にとって共通の敵がいたために、大きな混乱や略奪こそ起きなかったが世界中で事故が相次ぎ、機械の使用はすぐに国連に禁止される。

 国連は代替交通手段として馬と帆船、情報伝達手段として伝書鳩を推奨。

 世界は中世まっしぐらの文化レベルにまで逆戻りした。

 この頃にはまだ判定球も存在せず、名のある魔術師やビショップなどがその魔力で直接属性を判別、手動で冒険者のデータ更新作業をしていた。

 その後、『深海の迷宮』から出現した『魔王クラーケン・ノブナガ』に海が支配され船舶の航行が不可能になると、事態を重く見た国連により欧州魔術師ギルドとの共同開発の下、ついに夢の念導体システムが発明される。

 これにより今や訓練所には欠かせない判定球や、前述のウィザードヴィジョン、遠く離れた場所同士を一瞬にして行き来できる転移港や念導体通信を利用した念話といった仕組みが次々と作られていった。


「アフリカで魔王を討伐する模様の中継だってさ」

 雑踏の中で足を止めた男がどうでもよさそうに呟く。

「ハッ、国連のヤラセだろ。魔王とかそんなもん実際にいるわけねえし。事前に連中が用意したしょぼいモンスター相手の台本イベントじゃねえの」

 冒険者でもない彼ら一般人の感想はこんなものである。

 彼らはモンスターの存在こそ認めてはいるが、世界各地の迷宮の最深部で冒険者によって倒されている、恐るべき魔王の存在などまるっきり信じてはいないのだ。


「ほっほ、ついに始まったか。わしは冒険者の勝利に50G賭けるぞい」

「面白ぇ爺さん、乗ったぜ。魔王の勝ちに50Gだ」

 とある酒場でそれを見ていた酔いどれた客たちの中には、不謹慎にも勝敗についてのギャンブルを始める者たちもいた。


「さて皆さんお待ちかね、ついに始まりました三大冒険者による『魔王アトゥ』討伐生中継。12年前に施された封印がいよいよ解ける瞬間を、今か今かと固唾を呑んで見守っております。皆さんに本日実況をお届けするのは、わたくし、"華炎のアナウンサー"ことデューク・セイガーがお送りいたします。ついに魔王がそのヴェールを脱ぎ、全世界の皆さんにその姿をお届けできる瞬間がやってまいりました。さあ異様な緊張感に包まれた現場から、本日の主役たち三大冒険者をご紹介しましょう!」

 異様にテンションの高い実況アナの進行で、アフリカの魔王討伐生中継は進行していく。

「この日のために国連は希少なレアメタルを大盤振る舞いして三大冒険者の装備をグレードアップさせるという大変な贈り物をしました。ご紹介しましょう、イタリアの『微笑み王子』こと我らがカルロ王子がその身に纏うは、古の聖骸布にレアメタルを織り込んで作られたという聖なるローブ『ホーリーメタルシュラウド』だぁーっ! その神聖さを前にしてモンスターは並の攻撃では傷ひとつ付けることすらできないぞ! さあ続いてここアフリカがホームのワンジムは、部族の歴代戦士に代々伝わる霊槍にレアメタルでコーティングが施された特別仕様の『ローホメタルムクキ』を手にして登場っ! その鍛え込まれた筋肉を頼みに、どんな相手にも恐れず勇敢に立ち向かい決して後衛には近づけさせないという頼もしい活躍ぶりに期待だーっ! 我らのカルロ王子を守ってくれワンジムっ! さて、最後はご存知侍のコジローですが、腰に下げているのは、なんと日本の国宝と呼ばれるフツノミタマをさらにレアメタルでコーティングした究極の業物『フツノメタルブレード』だぁーっ! その輝く刀身を見ただけで低レベルのモンスターなど斬るまでもなく雲散霧消してしまう、まさに鬼に金棒、コジローに『フツノメタルブレード』っ! 年間数体の魔王を倒しているというその実力が今日、明らかになるでしょう。わたしくも非常に楽しみであります」

 紹介された3人の姿を見た人々、特に女性からは黄色い歓声が世界中で飛び交った。

「キャーッ! カルロ王子よ!」

「ウソっ!? 今から『微笑み王子』の戦いを生で見られるの!?」

「王子様ステキーッ!」

 それもそのはず、カルロといえば『冒険者ルルブ』の『女性冒険者が選ぶ抱かれたいイケメン冒険者ランキング』1位の座をデビュー以来守り続けている超絶天才美男子、しかもイタリアの本物の王子である。

 そのアイドル性には世界中の女性が魅了されたといっても過言ではないだろう。

「みんな全然分かってないわね。カルロより断然ワンジムだわ。男は筋肉よ」

 黒水晶のネックレスをしたフェアリー族の女の子だけはワンジム派らしく、機嫌が悪そうだ。

「男は筋肉よりもやっぱりイケメンなのー。女の子はみーんなカルロ王子のファンなのー」

 キラキラなサークレットを額にはめたもう一人のフェアリーの女の子がぱたぱたとその周りを飛んでからかった。

「じゃあどっちが魔王にトドメをさすか勝負よ! 絶対ワンジムの方が強いんだから! 鍛えてるし!」


 コジローは決戦を前に本日パーティを組むことになった仲間たちの顔ぶれを改めて眺める。

 ワンジムとは以前からの顔見知りで、そもそも彼が冒険者になったのはこのアフリカの地でコジローがその戦士の才能を見出したからである。

 故に彼とは何度か一緒にパーティを組んだこともあったが、カルロとはこの日が初顔合わせだった。

 コジローも噂には聞いていたが、世界最高のビショップというだけあって魔王との戦いを前にして何の緊張も見せず、その顔には微笑みすら浮かべている。

「やあ、なんだかボクらはいい見世物状態だね。国連に装備を強化してもらったのは嬉しいけれども、まさかその条件として戦いを生中継とはね」

 そう言ってカルロは仲間に陽気に話しかけると、両手を広げておどけて見せた。

 どうやら悪い男ではないらしいとコジローは判断してフッと笑う。

「見世物にされようと道化にされようと、俺は目的が達成されればそれでいい」

 コジローの言葉にワンジムも頷き霊槍を持つその手に力を込める。

「ワンジム、故郷のアフリカ救う」


 そして静寂の中、ついに12年前、迷宮調査員ダイヤ&ハートが命と引き換えに施した封印が解ける瞬間がやってきた。

 現れたアトゥはコジローには最初ただの木に見えた。

 無数に生い茂った葉が風もないのに一斉にざわめくと、その木は巨大な森を思わせるほどに一気に成長し、凄まじいスピードでウネウネと蠢くその触手のような枝を伸ばし続け、やがて互いに複雑に絡み合って人に似た姿へと変化していく。

 口に該当する部分にぽっかりと空いた空洞から声が響く。

「ヨクモ ムシケラゴトキガ ワレヲ フウジコメテクレタナ ソノレイトシテ キサマラノセカイヲ ホロボシテクレル」

 抑揚のない不気味な口調でそえ語りかける魔王アトゥ。

「光の精霊よ天より来たりて見えざる者を包みその姿を明らかにせよ<光視>」

 すぐさまカルロは対象鑑定呪文を唱えたが、その顔が一瞬にして曇る。

「種族名不明だって? ……なら裏ワザを使わせてもらうとするよ」

「光の精霊よ天より来たりて見えざる闇を照らしその全てを明らかにせよ<超光視>」

 カルロが唱えたのは超対象鑑定呪文。

 あるゆる対象のほぼ全ての詳細情報を視認できる究極の呪文だった。

 僧侶がマスタークラスで習得できる僧侶呪文にそのような呪文はなく、彼がどうやってそれを習得したのかは謎である。

「なんてことだ……こいつは、アトゥは魔王じゃない」

 カルロの顔から微笑みが完全に消え、その目は驚愕に見開かれた。

「種族名は『邪神アトゥ』……神だ」


 神。

 魔王は通常のモンスターとは別格の上位存在であるが、神は恐らくその魔王も上回る超上位存在。

 世界に神と名のつくモンスターが現れたことはまだない。

 この世に奇跡の技をもたらしたと伝えられる聖イグナシオ神の姿すら確認されていないのだ。


「たった今入りました情報によると……ゲェー!? な、なんと『魔王アトゥ』は魔王ではなくさらなる上位存在、『邪神アトゥ』だった模様です!」

 情報をいち早く耳にした実況のアナウンサーが椅子から転げ落ちた。


「おまけに『状態:自動再生』ときてる。こいつは厄介な相手だね。短期決戦で一気にカタを付けないと不利だ」

「アトゥの初撃は俺が必ず食い止める。その間に魔力付与の呪文を頼んだ」

 コジローが真剣な眼差しで愛刀を抜く。

「ちょっと待った、あいつの攻撃はボクも聞いているよ。『核撃のブレス』だろ? 素直に呪文で防御した方が良くないかな?」

 僧侶呪文の<防膜>ならブレスダメージは確かに相当軽減されるので、カルロの案はもっともだった。

「いや駄目だ。防御呪文でも、それどころかその<ホーリーメタルシュラウド>でも恐らく防ぎきれん。一発でも食らえば俺たちは負けるだろう」

「そこまで言うならキミを信じてみよう。当然、何か勝算があるんだねコジロー?」

 カルロがそう言うとコジローは邪神から目を逸らさず返事をする。

「ああ。ブレスを防いだ後に全てを賭けて総攻撃する。その準備をしていてくれ」

「ワンジム、コジローの言うことに従う」

 コジローの言葉を聞いてカルロとワンジムは頷いた。


 魔王ではなく邪神であったとの報せを聞いた人々の反応は様々だった。

 少しでも遠くに逃げようと転移港に駆け込む者、その場で泣き崩れる者、手当たり次第に好き放題己の欲望を満たそうとする者。

 とある酒場では客たちが諦めに似たムードを漂わせながらもウィザードヴィジョンの様子を食い入るように見守っていた。

 当然その手には酒がある。

「ほっほ、わしは冒険者の勝利にさらに5000G賭けるぞい」

 赤ら顔のノームの老人がGのたっぷり詰まった、ずしりと重い革袋を取り出した。

「爺さんも最後にヤキが回ったな。まあどうせこれで世界もオシマイさ。いいぜ、その勝負乗ってやる」


「ホロベ ムシケラドモ」

 アトゥの空洞から汚れた熱気が立ち込め、三大冒険者目がけて放たれる。

 だがコジローはこの瞬間を待っていた。

「アトゥ敗れたり、<ブレス返し>ッ!!!」

 その昔、藤原紅麻呂が用いた伝説の技は、轟音と共に巨大な旋風を巻き起こし、核撃のブレスすら邪神へと跳ね返したのだ。

 自ら吐き出したブレスに包まれて、邪神はかなりのダメージを負ったはずである。

「アリエヌ ワレノホロビノヒヲ カエセルハズガナイ ムシケラニチカラヲアタエタ カミガイルトイウノカ」

「いけるぞ、今が好機だ」

 邪神が繰り出した核撃のブレスをコジローが防ぐと、事前の打ち合わせ通りにすぐさま反撃の準備に転じる。

「ブラボー、ブラボー! まったく、キミという男はボクを驚かせてくれる。ボクは今から使う呪文に全魔力を注ぎ込む。その後は恐らく指一本動かせなくなるだろうが、キミたちの武器には数倍の攻撃力が備わるはずだ。一気に決めてくれ」

 ワンジムが油断なく盾となっている間に、カルロは素早く呪文の詠唱を終えた。

「森と動物と精霊の御名において今ここに奇跡の御業を<覇闘武霊具>」

 全魔力を使い切ったカルロが地面に倒れると同時に、コジローの『フツノメタルブレード』とワンジムの『ローホメタルムクキ』がプリズム色に輝き出す。

「ワンジム、部族の誇り背負っている。だから負けられない」

「ああ、ここで決めよう! 行くぞッ!!!」

 ワンジムが邪神の腹部を目がけて重く鋭い一撃を突き出し、頭上からはコジローが必殺の<狼砕牙>を放つ同時攻撃。

 それに対して邪神は何事かを囁いた。

 すると――。

「信じられない……無傷、か」

 倒れたままのカルロが声を絞り出す。

 コジローとワンジムの額にも汗が滲んでいる。

 そう、これ以上にないはずのあの同時攻撃が邪神には完全なノーダメージだったのだ。

 次の瞬間、邪神の触手のような枝が鋭い槍状となり無力なカルロへと一直線に伸びる。

 ワンジムは素早く行動するとそれを自らの体で受け止めた。

「ワンジムっ!?」

 鋭い枝は胴体を大きく貫通し、ワンジムはもはや助からないだろう。

「ワンジム、絶対敵に背中を見せない。死ぬ時は、前のめり」

 だが彼は倒れることなく自らの腹から突き出た枝をそのままぐっと握り締めて動かなくなった。

 自らの命を賭して仲間であるカルロを守ったのだ。

「うおおおおっ!!!」

 怒りに燃えたコジローが、ワンジムが押さえ込んでいる邪神に向かい躍りかかる。

「ムダダ ワレニソノヤイバガトドクニハ アトイッポオヨバナカッタナ ムシケラヨ」

 邪神はコジローが渾身の一撃を込めて叩き込んだ『フツノメタルブレード』を軽々と触手のような枝を交差させて受け止めると、そのままコジローの右腕ごと引き千切って投げ捨てた。


「なんてことでしょうか、三大冒険者の全力の攻撃が通用しないどころか、コジローの右腕が……これはひどい。コジロー、カルロ、ワンジムの三大冒険者といえども、やはり人では神に勝てないでしょうか……。間もなく世界滅亡の瞬間が訪れようとしています。さようなら、ウィザードヴィジョンをご覧の皆さん……」

 実況のアナウンサーはついに諦めた。


「コジローっ!」

 カルロが叫んでいる。


 今にも気を失いそうなほどの強烈な痛みと血飛沫の中でコジローは思い出していた。

 幼き頃、祖父から聞かされた冒険者の話。

 祖父と同じパーティだったというその侍はとても偉大で勇敢な男だと聞かされ、その武勇伝を何度も何度も繰り返しねだった。

 祖父も父も偉大な僧侶で一族からは有能な僧侶を多数輩出している。

 だが跡取り息子である自分は彼らとは別の道を歩むと心に決めていた。

 侍になりたい。

 一族の大反対の中、12歳で日本にやって来ると素性を隠したまま件の引退した侍が開いている道場の門を叩き、弟子入りを許された。

 その剣の道は厳しく、そしてとても温かであった。

 3年後、道場での生活に師の孫娘が新たに加わるとそれはより一層かけがえのないものへとなる。

 侍となった今の自分が師の恩に報いる道はただひとつ。

 彼らの仇であるこの邪神を討つ、なんとしてでも絶対に。

 たとえ両手両足を失い、這いつくばってでも。


「まだ…………だッ!!!」

 最後の奥の手、コジローは生まれ持ったその大きな牙を邪神の首筋に当たる部分に深く食い込ませると、魂を込めて大きくそれを噛み千切った。

 コジローは大きな牙を持つ狼から進化したといわれる種族、ラウルフであったのだ。

 武器と片腕を失い、ただ死を待つだけの存在から受けた予想外の攻撃に、邪神にほんの僅かな隙が生まれる。

 そしてコジローはすかさず失った自らの右腕に握られていた『フツノメタルブレード』を無事な左手で取り戻した。

「俺はこの戦い、死んでも負けられないッ!」

「コザカシイ オトナシクシヌガイイ ムシケラヨ」

 伸ばされた触手をコジローは華麗に捌き邪神へと迫る。

 だが、隠されていた死角からの触手の一撃がコジローを狙おうとしていた。

 ザクッ!

 それを縫い止めたのはワンジムが放った『ローホメタルムクキ』であった。

「コジロー、後は任せた」

 そう言って瀕死の重傷にも関わらずワンジムは親指を立てる。

「ワンジム、その思い受け取ったッ! アトゥよ、國原中弥斎が弟子、佐々木琥侍狼の剣を受けろッ!!!」

 そう言ってコジローは邪神に向けて渾身の一撃を放つ。

「喰らえ、<一ノ太刀>ッ!!!」

 先ほどのお返しとばかりに邪神の両腕に当たる部分を綺麗に切り落とす。

「バカナ ナゼ キズツイタソノカラダデ サキホドヨリモタタカエル」

 邪神がその勢いに怯むと、コジローは勝機の時が来たと悟り、静かに目を伏せて片手で上段から下段に弧を描くように剣を動かす。

「この時を……この時を待っていたぞ、邪神アトゥ! 貴様はここで、俺が倒すッ!!!」

 カッと目を見開きコジローが吠える。


 ワオオオオーーン!!!


「國原一刀流! 佐々木琥侍狼が最・終・奥・義ッ!! <狼月狂砕牙>ッ!!!」

 下段から一気に振り上げたその渾身の一撃は見事なクリティカルヒットとなり、邪神の上半身を斜めに切断した。

 切り落とされた方の邪神の体はあまりの威力に粉々に砕け、辺りに爆発四散する。

「ムシケラゴトキガ カミデアルワレヲホロボスダト バカナ ア リ エ ヌ」

 空洞から絞りだすような声を出した後、邪神はついに物言わぬただの枯れ木へと成り果てた。

「我が大願、ここに成就しました。師匠、そして弥生……」


「あーっと! 出たぁーっ、コジローのクリティカル! 邪神が倒れたーっ! 人類は、世界は救われました! ありがとうコジロー、カルロ、ワンジム! ありがとう世界三大冒険者!」

 実況アナの使った『世界三大冒険者』というフレーズは、この日以来世界中で大ヒットした。


 各地で生中継を見ていた、それまで冒険者に対して懐疑的であった一般市民の反応も、それまでとは変わったようである。

「コジロー、ヤバくね?」

「侍ってあんなに凄いんだな……俺も冒険者登録してみようかな」

「はぁ、カルロ王子素敵ぃ……」

「ワンジムこそ男の中の男だぜい!」


「やっぱりワンジムよね! あの一撃がなかったらコジローはやられていたわ」

「ちーがーうのー邪神を倒せたのはカルロ王子の魔力付与のおかげなのー!」


 同じくウィザードヴィジョンの中継を見ていたある一人の少年の心に、突如道が開けた。

 少年は孤独な中学生活を送り、友もなく、夢もなく、未来にも何の希望もなかった。

 ついさっきまでは。

「冒険者、か。僕もなれるかな」

 葉山旭。

 15歳の少年は、その進路を期限ギリギリで訓練学校へと進む道を選んだ。

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