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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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アングラデスの迷宮第二層&第三層 Good

 『アングラデスの迷宮』第二層、その通路でうにょうにょと団子状の巨大な何かが蠢いていた。

「気持ちの悪いのが出てきましたわね。光の精霊よ天より来たりて見えざる者を包みその姿を明らかにせよ<光視>」

 ヴェロニカがその美しい顔を歪ませながら対象鑑定呪文を速やかに詠唱する。

「種族名はコープスワーム。その数は8ですわ」

「ようやくそれらしい相手が現れたか。『イグナシオ・ワルツ』戦闘態勢に入る。隊形は『2・2・2』だ」

 そう宣言したリーダーであるロードのジェラルドが剣を抜くと、侍のムクシも刀に手をかけその傍らに立つ。

 そのすぐ後ろでは、ヴァルキリーのマナとモンクのベンケイがそれぞれのロングウェポンを手に油断なく控えている。

 最後方では僧侶のヴェロニカとビショップのトニーノがいつでも呪文を詠唱できるようにスタンバイしていた。

 鋭い歯を向けて、素早い動きで一気に距離を詰めるコープスワームたち。

 だが、ジェラルドとムクシが放ったそれぞれの一撃がそのミミズのような体を寸断、飛び散った体の一部が床でビチビチと跳ねる。

「はぁーーっ!」

 続いて気合のかけ声と共に突撃したマナは、手にしたその突撃槍でコープスワームの体を壁に縫い付ける。

 それとほぼ同時にベンケイが長巻を振り下ろし、槍で動きを封じられていたコープスワームにとどめを刺す。

 息の合った見事な連携だ。

「サバトの火よ我の呼び声に応え愚かなる罪人を燃え上がらせよ<燃焼>」

 トニーノが唱えたそれは魔術師呪文のひとつである炎属性攻撃呪文だった。

 全てのコープスワームは一斉に炎に包まれると苦しそうにその身をくねらせ、辺りにはジュウ、と焼け焦げた音と匂いが広がる。

 そうして残りのコープスワームも同じようにして全てが倒された。

「歯ごたえがない敵なのでーす。ワガハイの奥義を披露する程でもありませんでしたぞ」

「ははは、次があるさ。私たちの迷宮は始まったばかりだ。これから深い層ではきっとその腕を存分に振るってもらうことになるぞムック」

 ジェラルドは笑いながら仲間の象牙色の毛に触れた。

 トニーノは顎に手をやり静かに仲間たちを観察する。

(ジェラルドとムックの実力は知っていたが、マナとベンケイもこれ程までにやるとはね。今の敵も決して弱い相手ではなかったはずだ。いやはや、これは本当に最速攻略も夢ではないかも知れない)

 『イグナシオ・ワルツ』は先日アキラたちが苦戦したその敵をいともたやすく殲滅させ、さらに先へと進む。


 第三層へ続く階段を発見してそこに降り立つのにもそう時間はかからなかった。

 だが、三層にジェラルドたちが降りてからもうかれこれ3時間が経過しようとしている。

 全員の胸中に違和感が沸き上がった。

「おかしいと思わないかトニーノ? 全ての部屋はもう見て回ったはずだが……」

 ジェラルドの言葉通り、彼らは広大な三層のあらゆる部屋をあらかた調べ尽くした後である。

 それにも関わらず、四層へと降りる階段がどこにも見当たらないのだ。

「ボスらしき奴を倒したあの場所も、さんざん調べたのに結局何も見当たらなかったからね」

 そう言って考えこむトニーノ。


 『イグナシオ・ワルツ』の面々は三層でオークの群れと遭遇した。


 オークはイノシシから進化したといわれるモンスターだ。

 彼らオークの種族には雌の姿は確認されない。

 だがそれでいて繁殖力は凄まじく、その数は世界でも極めて多い。

 これは一体どういうことかといえば、オークはヒューマノイドの女相手ならばどんな異種族でも子を宿させる、特別な遺伝子の力を持っているからだ。

 この世界では異種族間の恋愛こそ大目に見られているが、異種族間での結婚、および子を為すことは種族保護の観点から国連の『国際冒険者法』によって禁止されている。

 この意識は犯さざる禁忌として、冒険者一般人問わず世界中の者に徹底して根付いている。

 当然オークの子を望んで孕もうとする者などいるはずもない。

 ゆえにオークはどこかから連れ去った女に、群れの上位リーダーが種付けを行い子を産ませる。

 だが最初に産まれた初産の子以外は著しく能力に劣るので、後は下位のオークに女たちは与えられて交雑によってその数を爆発的に増やし続けるのだ。

 この嫌悪を催すおぞましいモンスターは、世界中の女性の敵なのである。


 大量のオークとそれを率いる、僧侶呪文を使いこなす強敵オークロード。

 巨大な陰茎を猛々しく屹立させたオークロードのその姿に、女性のマナとヴェロニカは特別嫌悪感を抱いたことだろう。

 迫り来るオークの群れにベンケイが長巻を振り払い、トニーノが攻撃呪文を食らわせ、その隙に斬り込んだジェラルドとムクシがオークロードに迫ると互いの剣技を持って一気に勝負を決めた。

 だが、この層のボスだと思われるそれを倒しても、発見できたのは宝箱がひとつだけ。

 ヴェロニカが罠予知呪文で調べたところ、毒針のトラップだったので食らうのを覚悟でジェラルドが開けてみたが、中には盾がひとつ入っていただけだった。

 ヴェロニカに即座に毒治療呪文を唱えてもらい、トニーノがビショップのアイテム鑑定能力でその盾を調べるとラウンドシールドだと判明したので、ジェラルドがそれを装備することにした。


 三層での発見はいまだこれだけである。

「もう一度この層を最初からじっくり探してみよう。きっとどこかに隠し階段でもあるに違いない。くそっ、こういう時に盗賊がいないのが悔やまれる」

 ジェラルドは爪を噛むと仲間たちにそう告げて、また広大な三層を歩き出した。

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