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僕の就職先は戦士、それも悪の。  作者: 伊邪耶ゼロ
城塞都市編
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レベル4

 迷宮を出たその足でまず訓練所に立ち寄った僕らは、さっそく冒険者登録証のデータ更新を行った。

 本日討伐したモンスターの総数は、シンプルスライム1、ブラッディバット9、ダーティークレイフィッシュ22、ジャイアントスパイダー6、ドブラット114。

 振り込まれた報酬Gは総計171Gだった。

 これを4人で割って一人頭40Gの取り分、端数の11Gはこの後行う祝勝会で費用として回す計画だ。

 冒険初日の6Gを考えると、本日の稼ぎは破格といえよう。

 一人前の冒険者らしくなってきたなと思い、何だか嬉しくなる僕。

 そうだ、アンナにちょうど40Gの借金があったんだっけ。

 宵越しの金を持たないタイプの僕だ、今のうちに返しておこう。

「アンナ、これ借りてた40G返すよ。どうもありがとう」

「アラ、アタシならいつでもいいのに。何なら体で支払ってくれてもイイのヨ?」

 アンナがウッフンと真っ赤なルージュを塗った唇をとがらせて投げキッスをした。

 もはや突っ込む気もないのだが、よくよく考えると今借金を返すと再び僕は無一文になる。

 ……まあ何とかなるだろう。

 いざとなればまたアンナに借りればいいさ。

 

 サラが判定球に表示された経験値精算の文字をタッチすると短いファンファーレが3連続で鳴り響いた。

「おめでとうサラ。大嫌いなネズミ相手に頑張った甲斐があったわネ。えらいえらい」

 そう言ってアンナがサラの乱れた髪を手櫛で綺麗に整えてあげた。

 サラは目を閉じて心地よさそうにその身を任せている。

 彼女にとってアンナというオカマの存在は、もうすっかり頼れるお姉さんキャラとして定着したらしい。

「やったねサラ。僕の方もあれだけ倒したからまたふたつぐらい一気に上がるかと思ったけど。というかサラにもう追いつかれちゃったよ」

「うふっ、私たち同じレベルだね。嬉しい」

 僕の声に可愛く笑って返すサラだったが、迷宮での激戦帰りで血まみれの姿だから何だかとても怖い。

「おい、あれ見てみろよ。あの子全身血まみれだぜ」

「うわっ、美人が台無しだな。って、あの隣りにいる男はもしかしてこの間酒場で暴れた……」

 どこからかそんなひそひそ声も聞こえる。


 『マルホーンの迷宮』第二層での冒険で、僕とサラは揃ってレベル4へと上がった。

 嬉しいには嬉しいのだが、初日にわりと楽にレベルがふたつも上がった分、僕は何だか物足りなさを感じる。

「レベル4っていうのは、訓練所でプラス3年間修行してデビューした冒険者のスタートレベルだから、仕方ないわヨ。むしろ3年分をこの短期間で一気に安全に上げられたことに、まずは感謝すべきネ」

 アンナの意見もごもっともだ。

 『鬼のカンキチ』に危うく3年『修行』させられそうになった僕としては、スパルタとはいえ一気にここまでレベリングさせてくれたアンナとヤンには感謝してもしきれない。

 するとヤンがどたどたとトイレから帰って来た。

「いやー出たよ出たよ、3日分はたっぷりと出してきたアルね。これでヤンさん、幸運のステータス急上昇よ、コーウンのね。ウシャシャシャ」

 えげつないセリフを大声でのたまうヤンに、周りの冒険者たちが一様に眉をひそめてこちらを見る。

 この人の仲間だと思われるのは恥ずかしいシーンが結構あるなあ……。

「おっ、アキラとサラはレベル4になったか。これがまた4から5に上げようと思ったらちょっと大変ね。『マルホーンの迷宮』だとドブラット5セットはかかるんじゃないアルか?」

 なるほど、レベルが上がれば上がるほど次のレベルアップまでの経験値もネズミ算的に膨れ上がるのか。

 初日にアンナの言っていた『アタシたちのレベルにもこの分だとすぐに追いついちゃうわネ』という発言はあながちただのお世辞でもなかったらしい。

 だが、あの数の相手を戦士二人でこなすのはもうゴメンだ。

 ドブラット5セットということは単純に考えて500匹である。

 冗談じゃないぞ。

「もっと楽な、というか強くてもいいんだけど、数の少ないモンスターで効率良く経験値やG稼げないかな」

「私もネズミはもうイヤ!」

 サラがぶるぶると首を振って僕の言葉に激しく同意を示す。

「そうねぇ、その辺りの話は後でゆっくりしましょう。まずはお風呂が先かしら?」

 アンナのお風呂というキーワードにサラが目を輝かせた。

「賛成! もう体中ベトベトで気持ちが悪くって。さあ、早く行きましょう」

 これは……もしかして迷宮で血と汗を共に流したパーティの仲間同士、混浴もありうるのか?

 僕は期待に胸を膨らませた。

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