蛇と少年
これも友人のお題蛇に基づき書きました。
いつの間にか、僕の傍には蛇がいた。
蛇に何かしたわけでも、蛇に何をしたわけでも無く
けれども、物心付いた時には既に僕の隣には蛇がいた。
名前など付ける間柄ではなく、ただ蛇としか認識していない。
向こうも同様らしい。
何が目的で僕に付いてくるかは知らない。
非力な僕等、とっとと食えば話は早い筈なのに。
この広い砂漠で、中途半端に言葉を覚えた状態で一人いた。
そこにこの蛇はいつの間にか存在していた。
まるで居て当然、元在る所に戻ったという風でもあった。
どうやっても離れる気が無いらしく僕は、仕方なく砂漠を進んだ。
すると、気色が悪い奴らが砂漠を進んでいた。
最初は盗賊か何かかと思った。にしても奇抜だ。
そいつらは、サーカス団というらしい。
団長を名乗る年の貫禄ある男が、僕と蛇に気が付いた。
「やぁ、少年。」
蛇は異様な目つきで男を視ている。そんな蛇を男は眼中に入れない。
あえてそうして、それとなく警戒しているのだろう。
「何かご用でしょうか。」
この砂漠において、用なんて有る筈無いのだが。
「君は蛇に懐かれている様だね。」
懐かれているというのはニュアンスが少し違うのだが、
この奇怪な状況を説明するのも面倒なことこの上ない。
なので、適当に相槌を打つことにした。
「ならば、蛇遣いとして我がサーカス団に来ないかね。」
まずい、非常に面倒だ。この蛇が命令してどうにかなる気がしない。
ここは断るべきだ。
「とてもありがたい話なのですが、今回はお断りします。」
相手は何か考えている様だ。髭に手を添えている。
「ふむ。そういえば、我々がここまで来るのに町からおよそ、
二週間程度かかったが。まぁ、君が言うのなら仕方がないな。」
絶句した。数日程度空腹を我慢すれば、街に着くものと思っていた。
現実はそうも甘くないということか。なら、
「解りました、お受けしましょう。」
男はしたり顔でうなずく。
「よかろう、私は賢い者を好む。君も今日からこの団のメンバーだ。」
さて、これからどうしようか。
未来の事など、考えてもあまり意味が無いと思う。
その未来が今になった時に、どうするか考える。
それでいいと思う。
じゃなきゃやってられないこの状況。