キャット・ファイト
四角い白き大舞台に立つ代表選手を、少女座敷童十五歳モードが愛らしい笑顔で紹介。
『さて、お待ちかねの第一回戦! 先ずは、九州地方代表の墨江選手!』
墨江は、色白な卵顔に、高い鼻梁と瑞々しい唇。切れ長な吊り目の割には穏やかだった。腰までの黒髪を、真ん中で分けている。身長は百八〇にも達し、骨太ながらも細い躰で、脚も長い。黒いヒールを脱いでリングに上がった。
『続く対戦相手は、近畿地方の白祢選手に雉子選手!』
白祢は愛嬌ある卵顔と、大きな吊り目。赤茶けた髪を肩で切り揃えて、真ん中分け。身長は百六〇で、小振りな胸。ブーツを脱いで上がった。
雉子は対して。吊り目の精悍で、整った瓜の輪郭。身長は、百七〇の細身。ブラウン系のブラウスに、同色のスカートは膝丈。焦げ茶の髪を肩甲骨まで伸ばして、七三分け。こちらもヒールを脱ぐ。
そして、三選手の女妖怪が全て素脚となった。
解説席ではメイン司会の、だつえ婆ァが垂れた細い目を歪ませて、張り切って解説していく。
『さあ、夜行さん。この闘いをどう見ます』
『キャット・ファイト!―――ですな』
顔を引き締めて、自信たっぷりと云い放った。脱衣婆ァ、歯を輝かせて受け止める。
『オヤジですなぁ、オヤジな発言ですなぁ』
『いやはや、お恥ずかしいです』
そう云って、夜行さんは、逞しい腕を回して後ろ頭を掻く。間に挟まれた鬼塚少年が、どう対応して良いか困った。そんなことは構わない脱衣婆ァが振る。
『鬼塚さんは、素脚に関して如何な想いを持ちます』
『うぇっ! いや、その……。ほら、はは始まりますよ』
苦し紛れに注意を逸らした。
リング上では、墨江と白祢とが構えていた。
白祢は半身に構えて片足の爪先を立てた、猫足の構えを取る。
対する墨麗の構えは、右足を前に左足を引き横にして、鈎爪にした拳突き出して背中を丸めていた。下げていた頭の、その黒い瞳は白祢を睨み付けていた。
これに浪花の猫又娘が、目を剥き驚く。
「な、何やの。あれ……?」
と、その瞬間。
白祢の腹に黒い太いモノが刺さり、娘を吹き飛ばした。