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少年Kの受難


『えー、最後も再び地獄を代表して、葬頭河婆ァ《そうずかばばぁ》です。―――以上の方々に解説を伺ってゆきます』

 脱衣婆ァが歯を剥き、笑顔で各妖怪達を紹介した。

 夜行さん。百九〇を越す見事な体躯の持ち主。蒼緑の肌に、立派な白髭に貫禄ある白髪。そして、巨大な一つ目に逞しく額から突き上がった角。着物と言うか道着と言うか、綻びて年季がある。

 葬頭河婆ァ。ギョロとした瞳に、四角い輪郭。気合いの入った、深い皺。悪戯な表情を見せる。白髪は腰まで達している。着物は使い古した、藍染の愛用の着物。脱衣婆ァとは古い付き合い。

 鬼塚少年。端正な美しさを持つ細面の少年。左側の瞳は、幼少期の怪我で潰したせいで、髪の毛で隠していた。やや色白で細身ではあるものの、控え目な筋肉質の躰。襟足まで伸びた、艶やかな焦げ茶の髪。濃い藍色のカッターシャツに、同色のハーフズボンに下駄。現在は、人間の世界にて学園生活を満喫中。

 鬼塚少年の身なりに気が付いた脱衣婆ァが、尋ねてみた。

『あれ、鬼塚さん。もう一着大事な物を、身に着けていませんが。お忘れになられたのですか』

 その指摘に大きく動揺しながらも、なんとか隠していく。

『何をですか? 僕は、いつもの格好ですが』

『何をおっしゃいます。黄色と黒のチャ』

『べっ、ベスト、ですね! ああ暑いので自宅へ直してきました』

『失礼しました。今回はソレを使う場ではありませんでしたね。ひひひ』

『あ、あは、あははははは……』

 とにかく笑って誤魔化すのだ、鬼塚少年よ。


 そんな少年に、控え室では、氷奈が大きな垂れ目を潤ませて熱い視線を送っていた。雪奈と寄り添いながら、恍惚の溜め息をつく。

「はぁー、あれが噂の鬼塚少年だっぺー。美しい少年だで……」

「あんまし、見詰めるでねぇぞ」

「おれ、後で申し込んでみるべか」

「後でな後でな。玉砕さ覚悟して行け」

「ああァー。躰が溶けそうだぁーー」

 氷奈の目線は、椅子に腰掛けた鬼塚少年の膝小僧。胸元を開けた、鬼塚少年の鎖骨と、その隙間。白く細い鬼塚少年の首筋。血色良く麗しい端正な、鬼塚少年の唇。といったふうに、正に舐めるように見詰めていった。




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