華やか地獄
地獄。
いや、場所が。硬質で黒々とした岩が隆々と盛り上がり、空は赤く染まっている。遠くには、太く長い巨大な針がうねりを造り、山と成していた。また遠くの場所は、眩い赤とどす黒い赤とが濁って混じり合い湖となっている。血の池などでなく、湖の如く広さがあり深さもあった。他の遠くの景色は、赤々と燃え盛る炎が黒い大地を割き、噴き上がりは天を突く勢いであった。
そこには、広く黒い大地があって、中央に白い舞台を設けていた。今大会の特別設置である。純白の舞台には、赤と青の柱を四本立てており、黒く頑丈な紐を三本の四カ所で計十二本張っていた。閻魔大王公認の、特設リング。観客動員数も半端な数ではない。各々の一族を代表して闘うとなるのは、異常に湧き上がるものだ。但し、男妖怪出入り禁止。当たり前である、この大会は「女妖怪のための女妖怪による最高の勝ちを決する神聖な場」であったからだ。
応援側は、開始前から殺気立っていた。北海道地方席は、雪女の一族から雪女郎の組織と雪ん子達。東北地方席は、鎌鼬の女達と座敷童の女達に影女や飛頭蛮一味。関東地方席は、判断するのが大変な数と種類の女妖怪達。中部地方席は何と、居なかったのだ。近畿地方席は、女猫又一族と十二単姿で正装した女郎蜘蛛の一団。中国地方席は、ねねこ河童の一族が押し寄せており、熱が上がっていた。四国地方席は、多種多様な女妖怪の一団。だから代表が地味だったんだよ、と云ってはいけない。九州地方席は、女化け猫一族が総力結集してこちらも熱い。こうして会場は信じられない数の女妖怪達で埋まり、尚かつ華やかで壮観であった。
そして、白いジャングルの中央にひとりの少女が立つと、マイクを握った。
『えー。お集まりの皆さん、わざわざ地獄に集まって頂き有難うございます。―――えー、今大会、リングでマイクを勤めさせて頂きます自分は、座敷童です。今回は特別に、十五歳モードになっています。ひとつ宜しくお願いします』
そう云った少女座敷童は、艶やかな黒髪長髪で卵顔の可愛い娘。地味な着物だが、丈が短くミニスカートになっていた。少女座敷童が更に続けていく。
『さあ、皆様お待ちかねの特別ゲストの登場です』
そう声を張り上げて、入口へと手を伸ばした。
『美しき紳士、天狐様です!!』