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ワイルド・キャット2


 再び雫の躰じゅうを、太い稲妻が足の先まで貫く。だが、踏ん張って、その掌を墨江の顎をめがけて撃ち上げた。瞬間、腕を放して体勢を少し崩したものの、体勢を直した女は、雫の顔を見据えていったその顔には、口の中を切ったらしくて端から赤い線が流れ落ちてゆく。これを親指で拭い取り、再び雫へと向けて微笑んだその顔は、僅かに歯を見せていた。この刹那に、直感的に危険なものを感じた女は、反射的に白い頬に張り手を撃ち込んだ。叩かれた顔を正面に直した墨江は、今度は雫を睨み付けるなりに腕を真上から振り下ろしてビンタを打ち下ろした。辛うじて顔面を防御したのにもかかわらず、体勢を崩してしまい、慌てて構え直した。それからは、雫の張り手ときどき突っ張りを交えた、墨江のビンタとの撃ち合いが続いてゆく。

 張り手。

 ビンタ。

 突っ張り。

 ビンタ。

 脳味噌がブレた。

 気張って、張り手。

 ビンタ。

 視界が波打つ。

 堪えて突っ張り。

 ビンタ。

 突っ張り。

 振り下ろしのビンタ。

 眼の内側に火が飛び散る。

 なんのなんの、突っ張り。

 捻り効かせてビンタ。

 脳内で雷が暴れまわる。

 負けるか、突っ張り。

 スナップの入ったビンタ。

 脳震盪、来た。

 ええい諦めるか、突っ張り。

 真横から、ビンタ。

 稲妻が耳から突き抜けた。

 こなくそ、突っ張り。

 振りかぶって、ビンタ。

 口の中が傷だらけに。

 そんな中で雫は、霞み歪んで溶けてゆく視界の中で、墨江の強靭なまでに揺るぎない意識の固さと芯の強さに半ば呆れかけて、これに女は圧倒されて、つい、口も気も緩めてしまった。

「……ギブア―――――ッ」

 何と塞がれてしまう。

 顔を近付けてきた墨江が、愛らしく微笑むなりにこう囁いた。

「云わせんけんね」

 たちまち雫の全身から血の気が引いてゆく。墨江は相手を逃がさないほどに肩を捕まえると、躰を捻ってゆき、限界まで力を溜め込んだビンタを顔半分めがけて撃ち込んだ。刹那、意識が遥か彼方へと飛んでいき、雫は糸が切られたかのように横へと倒れ込んだ。恐る恐る近寄ってきた少女座敷童は反応を確かめてゆくと、雫の眼は虚ろになり口もだらしなく開いていたために、解説席へと腕を交差させた。

 雫選手、戦闘不能。

 勝者。九州地方代表、化け猫の墨江選手。




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