控え室じゃけ。
雪奈と氷奈は控え室に入るなりに、その後ろで担架が三台通過していくと、二人は揃って振り返って手を合わせてゆく。
「おんしら、殺しておらんじゃないの」
雫の突っ込みに対して、二人が気の毒そうな顔をして頭を掻いた。
「雫さん。おれらは、ほどほどにやるさ云うとったべなー」
「んだー。あたしたちけっこうやり過ぎだで」
と、雪奈の後に氷奈がこう続けたのちに、二人は寄り添いながら長椅子に腰を下ろしていった。
しばし数分ほどの沈黙がつづいたあとに、医務室から浪花の猫又娘たちが戻ってきた。白祢が墨江と目線を合わせた途端に、プイと顔をそっぽ向けて腕を組み、ロッカーに背を預ける。一方、相棒の雉子は墨江に目を合わせるなりに、何やら照れくさそうに挨拶。これに反応した黒衣の化け猫女が、その二人へと優しく微笑んでみせた。ここで口を開いた雫は、二人の猫又娘へと尋ねていく。
「そうじゃ。桔梗さんは、どげんしとるんかいの」
「もちーっと、かかる云いよったで」
雉子が答えてあげた直後に、ロッカーでむすくれていた白祢の割り込みがきた。
「アンタら、ええなぁー。術使えて……」
「白ちゃん。止めや」
雉子の注意を挟んで、さらに意外な者が割り込んできたのだ。しかも柔らかく。
「なんなら、今、使うたらどげんね」
墨江の言葉に妙子を除いた他の女妖怪たちが驚いていくなかで、白祢が佐賀の化け猫女にへとニンマリと歯を見せて悪戯な笑顔を送ったのちに、両腕を突き上げて力いっぱいに叫んだ。
「ぃよっしゃあ!―――今から耳と尻尾を見せてやるさかい、アンタらカメラ持ってこンかい!」
すると、墨江は自身のロッカーからデジタルカメラを持ち出してくると、猫耳撮影会を始めていった。もちろん、雉子も強引に巻き込まれての展開。
そして終了。
「あっ。雉ちゃんカワエエやんか」
白祢が笑顔で感心。
「墨江さん、アンタ結構上手いんじゃね」
雫も画像を拝見。
「お、おれたつも、お願いしてみるべか」
「やんだー。恥ずかしいでねぇかー」
そんな北の女二人を見た墨江が、にこやかに受けた。
「良かよ」
このひと言に照れながらも、雪奈と氷奈とが参加して撮影会が再開していく。