頭叩くでねぇ
打撃された早苗の頭は、回転力を付加してリングへと叩きつけられて跳ね上がり、我がチームのコーナーポストへと二度ほどバウンドしながら転がって行った。
その間に、雪奈から氷奈に選手交代。
だが相手側はもう、朋江に交代していて走り出しており、そして、首飛ばして氷奈の顔面ド真ん中に頭突きを炸裂させた。青紫の鼻血噴き上げ、仰ぎ見る。
「氷奈ちゃん氷奈ちゃん! おれと同じ事さして、笑わかすだか!?」
雪奈が身を乗り出して、突っ込んだ。そんな間にも相方は、朋江から当て身を喰らい突き飛ばされて、ロープで躰が跳ね返ったときに、身長差十センチの前蹴りが胸板に突き刺さった。頑張って防御したものの、力負けしてロープに押し付けられ、朋江の頭が髪の毛を羽ばたかせながら噛み付きにかかってきた。氷奈は必死に顔を庇いながら追い払おうかとしていたものの、朋江の頭が執拗に歯を立て続けてゆく。やがて、細々と腕の肉が抉られていき、青紫の血が滲み出て来て、しまいには泣き出す始末。
「あんまりだ〜あんまりだ〜〜っ。イテテテ! イテ〜〜〜っ!」
ろくろっ首側のコーナーポストから、応援の声が飛ぶ。
「朋江ー! そんままやっちまえー! ギブアップさ取っちめぇ」
「アタシの髪の毛さ、ボロボロさして許せね! 思い知らせてくんろっ!」
美香と早苗の声援を受けて、噛み付きが加速した。腕が血だらけになり麻痺もきて、そのあとから再び痺れと痛みがきて泣き声が増した。
「うああぁ〜〜っ! あんまりだァ〜〜っ!」
可愛い相方を泣かされて腹を立てたのか、雪奈がロープ伝いに勢いつけて走り出してゆき、朋江の頭をめがけて怒り渾身の腕を叩き込んだ。そして勢いそのまま、コーナーポストに挟んだ。一瞬、頭が潰れたかと思われたが、元に戻って白い舞台に落下。不意打ちを喰らってしまい、気を失ってしまった。司令塔との通信が絶たれた途端、残りの躰は、操り人形の糸が切られたように崩れ落ちてゆく。気絶した朋江の頭を見下ろしながら、雪奈が吐き捨てた。
「やり過ぎだで。ほどほどにな」
それから、いまだに泣いている相方のもとへとゆき、肩に優しく手をおいて、微笑んで語りかけていった。
「氷奈ちゃん氷奈ちゃん。痛かっただか。おれが、お返ししてやったぞ」
「有難うな、有難うな〜〜〜」