パイ マオ
大阪府道頓堀。
「あー、今日もお客さん来ーへんかったなぁ」
「白ちゃん。最近アンタ、アルコールに慣れ過ぎやでー」
六畳の居間にて、スレンダーな女が若い娘をそう気遣っていく。とりあえずは酔いを抑える為に、暖かいお茶を飲ませた。長身の女が、小柄な娘に溜め息を交えてひとつ。
「ウチら猫又やんかぁ。酔うんナら、マタタビに留めとかんとー」
「ィヒッ! 分かっとるでー、分かっとる」
そう云う娘を見た女は「仕方ないな」といった笑顔になりながらも、桜色の封筒を手渡した。
「白ちゃん。アンタに届いとったで」
「ほ、ホンマか!?」
酔いが醒めた。
「きっ、雉ちゃん。ええねんか?」
「阿呆。ウチじゃなくて、アンタに届いたんやで。喜べや」
「すまんなぁー! ホンマにすまんっ!!」
「なに云うとんの。白ちゃんの力が認められた証拠やで。連中に思い知らせてキィや」
「よっしゃあ、雉ちゃん。見とってや!! 猫又の怖さ叩き込んだるさかい!!」
「気張ってこいや!」
そして、封書の内容は。
近畿代表、猫又・白祢様と雉子様出場決定。と、いうものだった。
「あ。雉ちゃんもおるで」
「あらっ! アカンあかん」
中を確認しましょう。
愛媛県。
少し浅黒くて細身の美しい女が、住処に戻ってみたら、お膳に封筒が置いてあった。細長い指で取り、眺めてみる。
「綺麗ー」
それは煌めく桜色。数秒ほど眺めてから、宛先を確かめて中身を何回も確かめたのちに薄笑いを浮かべた。その女は、着物姿で鈍色の髪は膝まで伸びていた。
―んふふふ……。ウチの髪ん毛のオトロシさば、分からせちゃるき。――
四国代表、針女・葛様出場決定。
東北部。
とある居酒屋に、スーツ姿の女三人がカウンターに腰掛けていた。三人共に美形であるが、それぞれに特徴があった。ひとり目は、厳しく精悍で長身。二人目は、一重瞼の切れ長な瞳の端正な黒髪。三人目は、大きな瞳の茶髪。桜色の封筒を開け、中をじっくりと読み込む事数分間。
茶髪の美香が可愛らしく微笑んだ。
「アタシら、出場だで!」
「朋江、美香。私ら認められたんだよ。よっしゃ、思い知らせてやるぞ!」
続いて、黒髪の早苗が強気な笑顔になった。
東北代表、ろくろ首・早苗様、美香様、朋江様出場決定。