表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/30

やり過ぎ女王


 葛の髪の毛を捕まえたまま、更に、妙子は次々と怒りの攻撃を女に刻んでいく。

 顔面に足刀。

 頭に衝撃波が突き抜ける。

 胸板へ踵を突き刺した。。

 息が詰まり胸骨にヒビが入った。

 腹に爪先を土踏まずまで刺し込む。

 胃液と体液が逆流して吐き出す。

 踵で顎を蹴り上げた。

 脳味噌と神経系を稲妻が貫く。

 引き寄せて頭突き。

 前頭葉から稲妻が走り頸椎が軋む。

 妙子が葛の髪の毛から手を外して半身に構えたとき、力一杯に踏み込んで、喉仏の下に親指を根元まで一旦刺し込んで引き抜くなりに、怒りで満たされた渾身の拳を胸板に撃ち込んだ。乾いた音を鳴らして、葛が仰向けに倒れてしまった。浅黒い女は舌を長く出して、泡を噴いていく。

 それから、少女座敷童が恐る恐る葛のもとに近寄るなりに、その瞳の反応を見るまでもなく顔を見ただけで、解説席へと腕を交差させた。

『た、担架をお願いします!』

 鈴を鳴らすような声で応急処置の指示を出したのだが、妖怪は基本的には死なないから大丈夫。

 葛選手、戦闘不能。

 勝者、中部地方代表の口裂け女・妙選手。


 解説席。

 脱衣婆ァが興奮気味に、夜行さんに訊いてみた。

『いやあー、あれは流石にやり過ぎでしょう。夜行さん』

『いえいえ! 逆にアレだけ、やられてみたいものですなぁー!』

 夜行さんの一つ目が血走って、ギンギンであった。太く逞しい腕を組んで、こう自信たっぷりに断言した。

『妙子選手は女王様ですな!―――はい。やり過ぎ女王様と云っても過言ではありますまい! 天晴れです、キましたよ!』

 興奮状態の夜行さんを余所に、葬頭河婆ァが鬼塚少年に尋ねてゆく。

『鬼塚さんは、ああいう女の子をどう思いますかね。 やっぱり脚が重要ですか』

『まさか。いくら何でもあれは度が過ぎますよ。脚、関係ないし』

『おや。やり過ぎ女王は、ストライクゾーンではないんだね』

『好み以前の問題じゃないですか』

 鬼塚少年の口を尖らかせて云っているこの口振りからして、どうやら本当に苦手な女妖怪らしい。


 そうして。

 控え室に妙子が戻って入った途端。

「妙子さん、やり過ぎだで」

 雪奈と氷奈から同時に突っ込まれた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ