控え室だで。
『天狐さんは、今の試合をどう見られます』
脱衣婆ァが話題を振ると、呆気に取られてた妖狐一族の長が、我に帰って驚いた。
『いや、その……。墨江選手が、余りにも強いとしか云いようがありません』
実に正直。
瞳ギョロつかせながら、葬頭河婆ァは楽しそうな笑みで割り込んだ。
『だつえ。これら逆に面白くなったんでねぇか? でも、猫耳見れて良かったじゃんよ』
『ひひ……。有難うよ』
一方の控え室。
墨江が戻ってきた後ろの方で、気絶した白祢と雉子が担架で運ばれてゆく姿を入口から目撃してしまった。ねねこ河童の雫が、引き吊った笑顔で墨江へと労った。
「よ、よう。お疲れさん」
「あら。有難う」
黒衣の女が優しい笑みを送ったときに、それを見た雫は照れて顔を逸らしたのちに、再び顔を見て話しかけてゆく。
「アンタ強かのぉ。無傷じゃな」
「んふふ。でも次は、そう行かなかったりしてね」
そう墨江が微笑んで返した側で、蒼い着物へと着替え終わった二口女の桔梗が、薄笑い浮かべて割り込んで来たのである。
「墨江さん。貴女の綺麗な躰に傷を付けるのは、わ た し」
「ほう……。おんしゃ、大した自信じゃの」
「私は、貴女じゃなくて墨江さんに話しているのよ。割り込まないでくれる?」
「だったら、勝ち上がって来んねさ」
「そうや……。相手と初めて向き合ったとき、云う言葉じゃき」
四国の針女、葛が墨江の後から静かに割り込んできた瞬間、たちまち空気が固まってしまった。そうとは知らずに、OL三人組……ろくろっ首の三人組が、トイレから涼しげな顔付きで戻ってくる。
「いやあー。スッキリだで」
美香が満足した笑顔で呟いた。一重瞼の早苗も後に続く。
「地獄さ云うてもよ、綺麗な厠だったなー。―――おや? 空気がまた固まってねぇだか」
只ならぬ緊張感に気付き、東北三人組が見渡していく。これに雪奈は、困り顔で後ろ頭を掻いた。
『それでは、第二回戦の選手達の入場です!』
そうしてリング中央では、少女座敷童が、元気いっぱいに次の選手を発表し始めてゆく。