表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/30

キャット・ファイト 3


 投げっぱなしのボディスラムに受け身が取れず、背中と後ろ頭を強打。白き舞台で、雉子の躰が跳ね上がってバウンドした。脳内と眼に稲妻が駆け巡り、腕が小さく痙攣を起こす。無情にも、墨江の全体重を乗せた肘鉄が、腹に突き刺さる。腹を押さえて激痛にのた打ちまわり、視界が溶けて醜く歪み曇っていった。何とか必死にロープへとしがみついて、一時的に回避。たまらずに、胃液混じりの血を吐く。

 ―な、何やの。あの女……。――

 気を振り絞って立ち上がって構えたとき、目の前に佐賀の怪猫、墨江が来ていたのだ。突き出した拳をとられてしまい、胸倉を掴まれたうえにロープへと押さえ付けられる。そして、百八〇の身の丈から全力で振り下ろされた、墨江のビンタが雉子の横っ面を殴りつけた。

 脳味噌が、頭蓋骨の中でのた打ちまわってゆく。さらに赤いコーナーポストへと胸を叩きつけられたのちに、髪を掴まれて後ろに引かれた。無表情の墨江が、雉子を強引に仰がせる。浪花の猫又女の白く曇った視界には、墨江の頭から突き出している二本の角―――いや、黒い猫の耳を目撃。

 墨江が発達した犬歯を剥いて、意識朦朧の雉子に囁いていく。

「馬鹿が。相手に全力出さすっか」

 その言葉に青筋を立てた雉子は、猫耳を生み、右手を猫の拳に変えて、墨江の頭を狙って振り上げた。刹那、黒い拳槌が胸板をめがけて叩き降ろされて、白いリングに頭を強打して、意識が吹き飛んでゆく。だらしなく口が開き、涎が流れ落ちる。百八〇の怪猫女は、浪花の猫又女を静かに見詰めているだけ。

 少女座敷童が慌てて駆け寄り、雉子の瞳に小型ライトを当てるも反応は無し。解説席へ向けて、腕を大きく交差した。

 続行不可能。

 勝者、九州地方代表の化け猫・墨江選手。


 会場が荒れて湧き上がっていく。意外にも早い決着に、どちらも猫化する事無く終わった試合に荒れだした。

 解説席も動揺を隠せないでいた。深刻な顔付きで、脱衣婆ァが切り出す。

『や夜行さん。これは、もう!!』

『うむ。キャット・ファイトどころでは、ありませんな!』

 一つ目を深刻に変えて、云い放った。すかさずそこへと、鬼塚少年が突っ込む。

『まだ、こだわってたんですか!?』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ