恋愛マニュアルは役に立たない
初めての作品です。習作ですのでばんばん評価していただきたいです。
「おはよう、佐藤さん!」
「おはよう!神崎くん!」
神崎は心のなかでガッツポーズをした。
−−−第一関門、突破!
昨夜徹夜してマニュアルを叩き込んだ成果である。
(思い出せ、マニュアルたちを)
『恋愛マニュアル第一章−−朝の挨拶は爽やかな笑顔でべし。』
『恋愛マニュアル第二章−−−相手の目を見て話すべし。』
『恋愛マニュアル第二章第二項−−−ただし、見つめすぎるのは逆効果。長くても5秒にするべし。』
(目を見て話すんだ…それでいて見つめすぎないように…)
神崎はひふみの目を見た。
1秒。
2秒。
3秒。
「…神崎くん?」
「は、はいぃ!」
「なんでずっと見てるの?」
「え、あ、それは…」
−−−第二関門、失敗
(こんなときは…)
『恋愛マニュアル第八章−−−相手に不自然な行動を指摘されたときは…』
(たしか…)
「いや、なんとなく見てただけというか…」
「え?!どういうこと?!」
『慌てて否定せず自然な振る舞うべし。※具体的な解答は状況に応じて考えること。』
(くそ…そこが知りたいのになんで書いてないんだよ!)
「ソノ…あれだ!顔が?見たくなって?みたいな…」
(何言ってんだ俺ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙)
「…え?」
(ほら…引いてるよ。さすがのエグキモ発言に。ひふみさん。)
「イヤ、今のは違…」
そう言い終わる前にひふみは姿を消した。
(終わった…何もかもダメだ…)
***
昼休み
神崎は一人、机に突っ伏していた。
(次だ。次でなんとか挽回を。)
そんな事を考えてると
「神崎くん…あのね…さっきのことなんだけど」
(まずい、こっちから声をかけて挽回するつもりだったのに)
「いきなり逃げてごめんね。その…私ちょっとだけ…」
(やっぱりキモかったか…こんなときはどうすれば…)
「そ、そうだよね。いきなり顔見たくなったなんてエグキモのキモだったよね。その…ごめん。」
『恋愛マニュアル第十章−−−相手に嫌がられたときはまずは相手の気持ちを肯定。そのうえで謝るべし。』
「いや、そういうことじゃなくて…」
(エグキモのさらに上…一体どんな言葉が…)
「私、ちょっとだけ嬉しかったの。普段そんな素直に言われることあんまなかったし。その…だから…」
(へ?うれしかった?あれ?こういうときはたしか…)
『恋愛マニュアル第二十章−−−相手に嬉しかったと言われたら…』
「あー!だめ!言えなーい!」
またしても逃げていったひふみ。しかし、神崎の頭の中はそれどころではなかった。
『嬉しかったと言われたら、脈ありかも!』
(いや、そんなわけ…あれ?)
***
6限目も終わり帰りのホームルーム。
神崎は考えていた。
(脈あり…そんなわけ…でも、もしそうなら…)
起立。気おつけ。さようなら。
さようなら!
(やべ、いつの間にか終わってた。帰らな…)
「さてと、私も帰るとするか…」
(待てよ。今は帰りに誘うチャンスなのでは?!えっと、マニュアルは…)
『第百章−−−帰りに誘うには…』
(いや)
「まって、佐藤さん。」
「どうしたの?」
「今日…一緒に帰らない?」
(何を聞いてんだ俺ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙。これじゃ朝の二の舞…)
「うん!いいよ!」
「え?本当に?」
「本当の本当だよ!さ、一緒に帰ろ!」
***
「……朝からずっと変なことしてたよね、俺」
「うん。すごく変だった」
「やっぱり……」
「でも、楽しかったよ」
「……え?」
「神崎くんと話すの」
(え?それって…)
***
『恋愛マニュアル第百一章――好きな人との距離を縮めるには……』
神崎は本を閉じた。
(……今日は、こいつに書いてあることより、自分で考えたほうがうまくいったな)
そう思った。
……けれど。
「まあ、明日のために一応読んどくか」
神崎は再びページを開いた。




