魔女狩りの園
向かいの家の女の子が、魔女として告発された。
審問の場で、彼女は「私を告発できた者も、また魔女でございます」と述べた。
審問官達は盲目的に喜んだ。
村に必ず居るはずの、魔女の結社を暴けると。
中には、殺されるのであれば、知っている者全て道連れにしてやるとばかりに、「あいつも魔女だ。こいつも魔女だ」と、声高に闇雲な告発を並べる者も居る。
審問官達の望む「魔女の結社」は、村人の半分以上になった。
女だけではなく、男も子供も老人も、次々に「魔女」と罵られ、処刑された。
私達の屋敷にも審問官達は来た。私と姉は藁小屋に隠された。
その日から、藁小屋での生活が始まった。
「静かに、じっとして居なさい」と言われて、その通りに暮らした。
私は、藁小屋の中に在ったぼろきれを縫い合わせて藁を詰め、ぬいぐるみを作った。
姉はチョークで壁に絵を描いた。
夏が終わり、藁小屋の中も冷えるようになった。
私達は互いに寄り添い、藁を上掛けの様に被って過ごしていた。
ある日、屋敷の方から煙の臭いがしてきた。パチパチと火の爆ぜる音がする。
煙は、たちまち私達の小屋を覆い尽くした。
姉は藁の中に私を隠し、上に覆い被さって煙から私を守ってくれた。
怯える私に、姉が優しく囁きかける。
「大丈夫。弓月の女神様が、きっと守ってくれるからね」
やがて、ガシャンガシャンと言う、鎧を着て歩く人間の足音が聞こえてきた。
「娘が二人いるはずだ!」と言う、複数の叫び声。
私は藁の中で小さくなって、呼吸も出来るだけ押し殺した。
彼等は藁小屋に突入して来た。
私の作ったぬいぐるみと、姉の描いた絵を見て、「魔術の儀式場だ」と唱える。
藁の山の陰に隠れていた姉を見つけ、姉の背に槍を刺した。
姉は口から血液を吐くと、何も言えずに絶命した。
姉の体を放り投げてから、彼等はそのすぐ下に居た私に気付いた。
「居やがった!」と叫んで、彼等は私の腕を掴み、藁の中から引きずり出す。
私は、弓月の女神に祈る古い言葉を唱えた。
鎧の中から、大量の赤い液体が迸った。鎧は中身を失って藁の上に転がった。
私は震えながら、外に出た。
屋敷が燃えている。夕方の空を染めるように。
あちらこちらに、内側から赤いものが炸裂した衣服や鎧が転がっている。
私は、屋敷の中から吹き出ている火炎に目を見開き、喉を鳴らし粗く息を吐いた。
気づけば、声を高く笑っていた。
私の正気は其処で尽きた。
その後、村を襲っていた審問官達の姿を見た者はいない。




